
はじめに
「高専は就職率が100%だから安心だ」
この言葉は、高専の進路を考える上で、誰もが一度は耳にするのではないでしょうか。実際に、高専の就職率の高さは昔から大きな魅力として語られてきました。
しかし、AI技術が急速に発展し、世の中の仕事が大きく変わろうとしている今、「これからどうなるんだろう」と不安に思う方もいるかもしれません。
この記事では、高専の就職率100%の真相に迫るとともに、AI時代において高専卒の価値がどう変わっていくのか、今後の展望について詳しく解説します。
就職率100%のカラクリと「就職氷河期」でも強かった歴史
まず、高専の就職率について、過去から現在までを正しく理解しておきましょう。この圧倒的な数字の裏には、知られざる高専の実績があります!
「全員が第一志望」ではない!100%の正しい意味
「就職率100%」は、「就職を希望した学生が、卒業までに全員どこかの企業から内定を得られた」という意味合いです。第一志望の企業に就職する学生も多いですが、第二、第三志望の企業に進む学生も含まれての数字です。
就職氷河期でも9割超え。昔から就職に強い高専
高専の就職の強さは、今に始まったことではありません。大卒の就職率が60%を下回るような「就職氷河期」でさえ、高専生の就職率は90%以上を維持していました。日本全体が不景気に喘ぐ中でも、産業界が高専卒の技術者を強く求めていたことの何よりの証拠です。
AI時代でも高専の就職率は100%であり続ける3つの理由
AIが人間の仕事を奪うとさえ言われるこれからの時代、高専の強みは通用するのでしょうか。
結論は、「通用する」です。その理由は、大きく3つあります。
- 日本の人材不足とDX(デジタル化)の加速
あらゆる産業で人材不足が叫ばれる中、その解決策であるAIやロボットを開発・運用できる高専人材の需要は増す一方です。
- 国策として教育内容がアップデートされ続ける
国も高専の重要性を認識し、AI、データサイエンス、半導体といった最先端分野の教育により多くの予算を準備しています。学科改組も活発で、時代に合わせた教育が行われるということです。
- 「専門分野 × AI」ができる人材を育成できる
これからの時代は「AI × 何か」が重要となります。高専では、ものづくりの知識をベースにAIを学ぶ「掛け算」の教育が強化されており、価値の高い人材を育てます。

なぜ「大学」ではなく「高専」がAI時代に強いのか?
高専には、これからの時代を生き抜く上で大学にはないユニークな強みが2つあります。
①15歳から専門技術に触れる「早期教育」のアドバンテージ
大学で本格的な専門教育が始まるのは18歳からですが、高専生は15歳から5年間、早い段階からどっぷりとテクノロジーの世界に浸かります。若いうちに専門分野の「考え方」や「勘どころ」を身体で覚えることで、深いレベルでの応用力や発想力が身につきます。
15歳からだと、大人では思いつかないような高専生ならではの発想が生まれることがよくあります!
②「AIを使える人」から「AIと専門性を組み合わせる人」へ
今後、「AIを使える」だけでは差別化が難しくなります。高専生は、「AI × 機械」でスマート工場を設計したり、「AI × 建築」で災害に強いまちづくりを考えたりと、自分の専門分野という土台の上でAIを活かすことが重要になります。
最も重要な注意点:「就職率100%」に甘えてはいけない
ここまで高専の強さを語ってきましたが、1つだけ絶対に忘れてはならない注意点があります。それは、「高専に入学さえすれば、将来は安泰だ」と考えることです。それは大きな間違いです。
「卒業=安泰」ではない。5年間で何を身につけるか
高専の本当の強みは、保証された就職先ではなく、「5年間という潤沢な時間」と「専門性を深められる環境」そのものです。この恵まれた環境をどう活かすかは、完全にあなた次第です。
自分の価値を高める「+α」を見つけよう
5年間、自分の専門分野をしっかり学んだ、ということは最低限言えなければなりません。その上で、「+αで何をしてきましたか?」という問いに、あなたはどう答えますか。
ロボコン、プログラミング、資格取得。そうした「+α」の活動こそが、あなたの市場価値を決め、数多ある選択肢の中から自分の行きたい未来を選ぶ力になるのです。
無料勉強相談って??
「高専に行ってみたいけど、勉強についていけるか心配…」、「受験対策は何から始めればいいの?」と不安に感じている方もいるかもしれません。そんな方のために、高専入試に特化した学習塾・ナレッジスターでは無料の勉強相談を実施しています。高専受験のプロである講師陣が、一人ひとりの状況に合わせてアドバイスしますので、安心してご相談ください。あなたもナレッジスターと一緒に、高専合格への一歩を踏み出してみませんか?きっと夢への道筋が見えてくるはずです!
まとめ:高専の強みを活かし、未来を選べる人材になろう
高専の就職率100%という神話は、AI時代においても続いていく可能性が非常に高いです。しかし、それは決してゴールではありません。
むしろ、それは「5年間、自分の未来のために自由に時間を使っていい」というスタートの合図です。
高専という最高の環境をフルに活用し、専門性に「+α」の輝きを加えてください。そうすれば、あなたは「就職させてもらう」のではなく、数多の企業から求められ、自分の未来を「選べる」人材になれるはずです。
【Q&A】高専の就職に関するよくある質問
Q1. 本当に就職できなかった人はいないのですか?
A1. 就職を希望したにもかかわらず、最終的にどこにも就職できなかった、というケースはほとんど聞いたことがありません。高専側も手厚くサポートをしてくれます。ただし、これはあくまで「どこかに就職できる」ということであり、希望の企業に行けるかどうかは本人の努力次第です。
Q2. 成績が悪いと、良い企業には就職できませんか?
A2. 大企業や人気企業への「学校推薦」は、成績順(クラス内順-位)で決まることがほとんどなので、成績が良い方が有利なのは間違いありません。しかし、成績が全てではなく、面接での受け答えや、課外活動での実績などが評価されて内定を得るケースも多々あります。
Q3. 専門と違う分野の仕事に就くことは可能ですか?
A3. 可能です。高専で学んだ基礎的な科学技術の知識や問題解決能力は、どんな分野でも応用が利きます。実際に、機械工学科からIT企業へ就職したり、情報系から金融業界へ進んだりする卒業生もいます。5年間の中で自分の興味を見つけ、それに向けた+αの努力をすることが鍵になります。

ライター情報
仙台高専マテリアル環境コースを卒業。
ニックネーム:nao
研究室では化学を専攻。コガネムシの研究をしていました。
趣味は野球観戦。楽天イーグルスを応援している仙台っ子です。