大人になってから思う高専時代に身についてよかったと思う技術は??

この記事では、高専の5年間で磨かれる専門技術から実践的スキル、そして「学び続ける力」や「自走力」といった人格的な強みまで、社会人になってから実際に役立ったポイントを具体例とともにご紹介します。数学やプログラミングといった専門知識は、データ分析やソフトウェア開発の現場で即戦力となるほか、実験レポートによる論理的思考と管理能力は進学・就職後の業務に直結します。さらに、高専ならではの産学連携プログラムや国際交流が培うコミュニケーション力・異文化理解は、国際プロジェクトやチーム運営で大きく貢献します。自ら学び、行動し続ける習慣は変化の激しい業界においても役に立つこと間違いなしです。

大人になってから思う高専時代に身について良かったと思う技術を分野ごとに分けて紹介します。

専門に関すること

数学:

高専では1年次から大学レベルの数学に取り組むため、思考の筋道を論理的に立てる力が自然と鍛えられます。特に線形代数や微分積分は、電気回路の解析や機械設計に必要な応力計算など、専門科目の基礎として重要です。例えば、電気電子工学科ではキルヒホッフの法則を用いた回路解析に行列計算が活用され、機械工学科では微分方程式を用いて振動解析を行います。

さらに、数学の応用範囲は広く、AIやデータサイエンス分野でも活用が進んでいます。実際に、製造業でセンサーデータの解析を行う場面では、統計的手法や線形回帰モデルなどの数学的知識が役立っています。このように、高専で学ぶ数学は、理論だけでなく実務の現場でも幅広く応用されているのです。

英語:

高専の授業ではあまり英語を多く扱いませんが、TOEIC・英検などの資格試験の勉強、国際交流で得たコミュニケーションスキルは社会に出てからも役に立ちます。卒業研究発表を英語で行った経験が、今でも国際会議での発表や外資系企業とのメールのやりとりで大きく役立っていると語る人もいます。語学というより「技術を伝えるツール」としての英語の大切さを学べたのは、高専ならではの経験です。

プログラミング:

C言語から始まり、PythonやJava、場合によっては組み込み系のアセンブリ言語まで、高専では幅広いプログラミング技術を学べます。加えて、コンピュータ部やロボコンなどの課外活動を通じて、教科書では学べない実践的な設計・開発の流れも体験できます。社会に出てから、API連携やフロントエンド開発など新しい言語に直面しても、基本構造を理解していれば十分対応できます。

レポートの書き方:

「レポートが多い」と言われがちな高専生活ですが、その分だけ“論理的な伝え方”の訓練が積めます。単に結果を書くのではなく、目的・仮説・手法・考察という一連の構成で記述する癖がつき、これは業務資料や報告書の作成でも大いに役立ちます。

実験の経験:

毎週のように行われる実験実習では、仮説検証型の思考が自然と身につきます。うまくいかない時に原因を探し、修正して再試行するというプロセスは、エンジニアリングそのもの。これは実務でのトラブルシューティングやテスト業務において、非常に重要な視点です。また、実験ノートや報告書の作成も、データ整理や説明力のトレーニングになります。

スキルに関すること

コミュニケーション能力:

高専では、プロジェクト形式の授業やアントレプレナーに関するグループ活動など、チームで動く機会が多くあります。その中で、意見を出し合い、調整しながらゴールに向かっていく経験を積むことができます。職場での報連相(報告・連絡・相談)や会議での発言、他部署とのやりとりなどにおいて、この力が問われます。

ソフトの使い方:

高専生はCADやCAE、マイコン開発環境などの実務レベルのツールを学生時代から使用するため、就職後も抵抗なく業務に取り組めます。たとえば、AutoCADやSolidWorksで図面を引いたり、MATLABでシミュレーションを行うなど、現場でそのまま活用できる技術を学べたことは大きな強みです。

私自身、高専を卒業後に大学へ編入し、研究室に所属したのですが,その際、実験やデータ解析に使用するツールが、高専時代に授業や実習で触れていたものと非常に似ており、高専での経験が大いに役立ちました。たとえば、プログラミングや計測機器の操作、データ処理ソフト(ExcelやMATLAB、Pythonなど)に慣れていたため、研究にスムーズに取り組むことができました。

国際交流:

近年の高専では、留学生の受け入れや短期海外研修プログラムが充実しており、多様な文化背景を持つ人との協働経験が得られます。異文化間での意思疎通は、語学力だけでなく、価値観の違いを受け入れる寛容さと柔軟さも必要です。これらはグローバルな現場で働く上で欠かせないスキルです。

マネジメント:

課題研究では自分たちでテーマ設定からスケジュール、分担、進捗管理まで行うため、小さなプロジェクトマネジメントの実践場となります。学生ながらに「締切を守る」「予算内でやりくりする」といった社会人の基本を体験できる貴重な機会です。

プレゼンテーション:

発表機会が多い高専では、自然と人前で話す力が身についていきます。研究発表会や技術コンテスト、企業訪問時のプレゼンなど、リアルな場での緊張感を経て、相手に伝わる構成や話し方を工夫するようになります。これは就職後の営業・企画提案・技術説明でも高評価につながります。

その他

継続した学習習慣:

5年間という長い教育期間の中で、定期テスト・中間試験・研究・進路対策と、常に何かしらの“準備”が求められます。これによって「学び続ける力」が自然と定着していきます。特に社会人になってからは、資格取得や業務改善など、学ぶ姿勢がそのままキャリアの幅を広げてくれます。

自己責任:

自由度の高い課題や研究テーマに取り組む中で、「誰かがやってくれる」ではなく「自分が動かないと進まない」現実に直面します。この経験が、社会に出てからの自律的な行動力に直結します。特にベンチャー企業や研究職など、自ら考え動く力が重視される場面で差が出ます。

自発的な行動:

高専には自主的な活動を推奨する文化があり、学生主導のイベントや勉強会、文化祭などを通じて、行動力と課題発見力を培うことができます。「誰に言われなくてもやる」スタンスは、周囲の信頼を得やすく、早期に仕事を任される人材になれます。

自走力:

高専では、手取り足取り教えるというより、自分で調べ、考え、試してみることを重視する教育方針が多いです。その分「わからないことを自分で調べて解決する」力が身につき、AI時代にも適応できる人材としての素地が作られていきます。

高専時代に避けるべき習慣は?

さて役に立つスキルについて紹介しましたが、逆に高専時代に避けるべきこともあります。

昼夜逆転生活

授業や課題の多い高専生活において、「夜更かし→昼間に眠い」という悪循環に陥ると、授業の理解度が落ちるだけでなく、集中力が必要な実験やグループワークでも周囲に迷惑をかけてしまいます。また、体内リズムが乱れるとメンタル不調の原因にもなりやすく、無気力状態や不登校に繋がることも。 試験前だけ夜更かしするのではなく、日常から安定した生活リズムを意識することが、結果的にパフォーマンスを上げます。

基礎が不十分

高専のカリキュラムは高校よりも進度が速く、1年生の段階から線形代数・プログラミングなど専門的な内容に踏み込むことが少なくありません。そのため、数学や英語などの基礎をおろそかにしていると、2年生以降に応用内容で苦しむことになります。とくに数学は、物理・制御工学・統計処理などあらゆる分野の土台となる重要科目です。基礎演習をコツコツ積み上げる姿勢が、後々の伸びしろに直結します。

勉強習慣がなくなる

高専では1年生から5年生までの一貫教育でありながら、進級試験や課題研究など年次ごとに求められる力も大きく変化します。この中で「1年のときは頑張っていたけど、2年以降はだらけてしまった」という声も珍しくありません。一度学習習慣が崩れると、再び立て直すのは簡単ではありません。特に高学年になると、課題や研究テーマが一気に増えるため、日々の復習を怠っていると後が本当にしんどくなります。

まとめ

高専は「専門知識」や「実践的なスキル」を5年間でしっかり磨ける、他にない教育環境です。しかしそれ以上に価値があるのが、 “自ら学び、行動し、成長していく力”を身につけられること。これは、変化の激しい現代社会において、何よりの武器になります。
ただし、その力を最大限に引き出すには、日々の生活習慣や学び方が土台となります。昼夜逆転や怠惰な学習習慣を避け、「小さな積み重ねを続けられる人」が、結果的に一番成長しやすいのです。

高専生としての毎日を大切にしながら、自分の未来を切り拓く力を磨いていきましょう!

ライター情報

熊本高専 人間情報システム工学科
ハルキ
情報系の高専生。趣味は写真。

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