高専卒業後の進路として注目される「大学編入」。この記事では大学編入の基本情報やメリット・デメリット、そして編入先を選ぶ際のポイントについて詳しく解説します。高専生の進路選択に役立つ情報を具体例やデータを交えて解説します。
- 大学編入って何?
- 大学編入のときの大学の選び方は?
- 編入試験までにしておくべきことって何?

大学編入とは
大学編入とは、高専本科を卒業後、大学に3年次(2年次の場合もある)から編入学する制度を指します。高専生の卒業後の進路状況の割合は次のようになっています。
円グラフより、高専卒業生の4人に1人が卒業後の進路として大学編入を選んでいることが分かります。大学編入は多くの大学で実施されており、特に高専での専攻分野に近い理工学系学部への進学が中心です.
大学編入のメリット・デメリット
大学編入には以下のようなメリット・デメリットがあります。
メリット
大卒資格が取得できる
高専の本科を卒業すると準学士という称号が与えられます。これは日本国内のみに通用する学術称号で、学位とは異なります。
大学編入をして大学を卒業すると学士という学位が与えられます。これが一般に大卒資格と言われるもので、就職やキャリア形成で有利になる資格です。
複数の大学を受験可能
大学編入では一般的な大学入試と異なり複数の大学を受験可能です。編入試験の日程が重なれば同時に受験することが出来ませんが、編入試験の日程が重なることは珍しいので、一般的な大学入試よりも多くの大学の併願にチャレンジすることができます。
大卒の方が高専卒より給料が高い(※企業による)
データによると高専・短大卒の平均月収が29.7万、大卒の平均月収が36.9万となっており、大卒の方が高専卒より平均月収が高いです。ただし給料は業界・企業によって大きく異なるので、大卒の方がかならず給料が高くなるとも限りません。
国立大学に進学しやすい
編入の方が一般入試に比べて相対的に難関国立大学への進学がしやすいと言えます。その理由として、試験内容が今まで習ってきた専門科目・理系科目のみの場合が多かったり、入試科目が少なかったりすることが挙げられます。ただし、難関国立大学へ合格しているのは成績上位者や早期に準備している人が多いので、対策なしにだれでも進学できるという訳ではありません。
より高度で専門性の高い研究が可能
大学へ編入するとすぐに研究室に配属されます。研究室にもよりますが、大学の方が高専よりも予算を多く持っているので、高専よりも専門性が高く大規模な研究を行うことができます。
デメリット
編入試験の準備が必要
編入試験に合格するためには準備が必要です。推薦試験では良い席次が必要となり、筆記試験では試験科目数が少ないものの、ある程度の学習時間が必要になります。高専4、5年生では研究や授業で学校生活が忙しくなるのでうまく両立する必要があります。
授業料が高い
一般に高専の学費よりも大学の授業料の方が高いです。また、入学金や一人暮らしをする場合の生活費が追加で必要となるのでコストがかかります。。
高専卒の方が就職しやすい
高専卒と大卒の有効求人倍率を比べると、高専卒は20倍、大卒は1.75倍で高専卒の方が有効求人倍率が高いです。また、高専では先生が就職先を斡旋してくれるなど就職に対するサポートが手厚い場合が多いです。ただし、この大卒は1.75倍という数値は全ての業界での有効求人倍率であり、高専卒の多くが就職する製造業では16.21倍です。
大学編入の編入先を選ぶポイント
編入の目的
大学編入の目的を考えることが最初のステップです。以下の点を整理してみましょう。
- 大卒資格の取得
- 就職や給料面での優位性
- 興味のある研究や学び
- まだ就職したくないなど。。
また、専攻科と比較してどちらが自身の目的に合うかも検討しましょう。
先輩や先生の助言
先輩や先生は進路や大学編入に関する知識が豊富です。
- 進学先の選び方
- 試験の難易度
- 推薦枠の有無
- 実際に編入してみた経験
具体的なアドバイスをもらい、自分の目的に照らし合わせて考えてみましょう。
興味のある研究分野・研究室
大学編入では、研究分野や研究室選びが重要です。気になる研究室がある場合、見学やオープンキャンパスに参加することで雰囲気を掴むことができます。推薦試験では研究室訪問が必須の場合もあるため、早めの行動が大切です。
推薦入試の有無
推薦入試は、口頭試問や面接のみで行われることが多く、一般的に筆記試験に比べて負担が少ないです。ただし、出願条件としてGPAや高いクラス順位が求められることがあるため、事前に確認が必要です。また、同じ大学でも学科・コースによって出願条件が全く違う場合があるので大学のHPをかならず確認しましょう。
高専から推薦で大学編入できる主な大学一覧※2025年1月現在
大学名 | 出願条件 |
北海道大学 | 特になし |
九州大学 | 4年次の席次が上位5% |
千葉大学 | 4年次の席次が上位10% |
熊本大学 | 4年次の席次が上位15% |
電気通信大学 | 4年次の席次が上位20% |
東京農工大学 | 1学年から4学年までの席次割合の平均が上位 20 % |
京都工芸繊維大学 | 3 学年及び 4 学年の成績席次がともに上位20% |
山梨大学 | 土木環境工学科:通年の席次が上位15% 先端材料理工学科:出身学科で概ね上位 25% |
岡山大学 | 3 学年及び 4 学年の成績席次がともに上位25% |
信州大学 | 機械システム工学科:成績の順位が上位30%以内水環境・土木工学科:成績の順位が上位50%以内物質化学科、電子情報システム工学科、建築学科:特になし |
愛媛大学 | 4 年次の成績が上位 30%以内 |
佐賀大学 | 理工学部:4 年次の成績が上位 1/3 以内の者 |
大分大学 | 理工学部:第4学年修了時の学習成績が上 位1/3以内であること |
北見工業大学 | 学科席次が上位50% |
弘前大学 | 学科席次が上位50% |
豊橋技術科学大学 | 在学中の成績が上位 |
長岡技術科学大学 | 在学中の成績が上位 |
東京海洋大学 | 英語資格・検定試験の成績が「CEFR A1 以上」 |
岐阜大学 | 成績証明書の得点が配点の80%以上 |
試験内容と日程
一般入試の場合、数学、英語、専門科目などの筆記試験が課されることが多く、その科目と範囲は大学によって大きく異なります。また、試験日程が重ならないように計画を立て、複数の大学を受験する場合はスケジュール管理が重要です。

大学編入までの流れ
情報収集
情報収集が一番重要です。
先輩や先生からの情報収集
過去に編入を経験した先輩や、進路指導に詳しい先生から直接話を聞くことで、具体的なアドバイスや体験談を聞くことが出来ます。特に、同じ高専から同じ大学・学部に編入した先輩の話は参考になります。学生課などに編入に関する資料や過去問がある高専もあるのでぜひ活用すると良いと思います。
大学の公式ウェブサイトの確認
各大学の公式サイトには、編入学に関する情報が掲載されています。募集要項、試験科目、過去の出題傾向などを確認しましょう。また、大学によっては3年次編入ではなく2年次編入になる場合もあり、大学によって編入制度は大きく異なります.
編入体験記の活用
インターネット上には、編入試験の体験記や合格体験談が多数掲載されています。これらを読むことで、試験の難易度や各科目の参考書・対策方法、面接の雰囲気などを把握できます。
研究室訪問やオープンキャンパスへの参加
興味のある研究室や学部のオープンキャンパスに参加することで、実際の雰囲気や教授陣の考え方を知ることができます。また、直接質問することで疑問点を解消できます。
SNSやオンラインコミュニティの活用
TwitterなどのSNS、または編入希望者が集まるサイトで情報交換を行うことで、最新の情報や他の受験生の状況を知ることができます。
出願条件を満たす
大学編入の出願条件は大学や学部によって異なりますが、一般的に以下の要件が求められます。
- 学業成績: 一定のGPAやクラス内順位が必要とされる場合があります
- 英語力: TOEICやTOEFLのスコア提出が求められることがあります
- 専門知識: 志望分野に関連する専門科目の履修や成績が重視されることがあります
各大学の募集要項を確認し、必要な条件を満たすよう計画的に準備しましょう。
編入試験対策
編入試験は主に以下の形式で行われます。
- 推薦試験(面接):
- 内容: 口頭試問や面接が中心で、筆記試験が免除される場合が多いです。
- 対策: 志望理由や研究計画を明確にし、専門知識や将来の目標について論理的に説明できるよう準備しましょう。一般的な面接対策に加えて編入先の大学の研究室について話すと良いと思います。専門科目に関する知識や英文について口頭で説明を求められる大学もあります。
- 一般試験(筆記):
- 内容: 数学、英語、専門科目などの筆記試験が行われます。
- 対策: 過去問を入手し、出題傾向を把握した上で、各科目の基礎から応用まで幅広く学習することが重要です。過去問は大学に請求するともらうことができます。詳しくは編入体験記を参考にしてください。
また、研究室訪問やオープンキャンパスに参加し、志望先の教授や学生と交流することで、試験対策の情報を得られることもあります。受け身の姿勢ではなく、下調べをして質問したいことなどを事前にまとめておくと良いです。
出願
出願時には以下の書類が求められることが一般的です。
- 志望理由書: なぜその大学・学部を選んだのか、将来の目標などを明確に記述します。
- 成績証明書: 高専での学業成績を証明する書類です。
- 英語スコア証明書: TOEICやTOEFLの公式スコアを提出します。
- 推薦書:担任や指導教官からの推薦状です。
各大学の提出期限や必要書類を事前に確認し、余裕を持って準備しましょう。
編入試験
編入試験は5月-8月の期間に行われることが多く、一般の大学受験の時期とは真逆の時期です。
試験当日は、時間に余裕を持って会場に向かい、リラックスして臨むことが大切です。
合格発表
合格発表は大学のウェブサイトや郵送で通知されます。合格後は、入学手続きの締め切りや必要書類を確認し、速やかに対応しましょう。入学手続きに加えて住居探しなど、新生活の準備が始まります。また、大学編入後には高専で取得した単位を編入先の大学で取得したとみなす単位変換もあります。
まとめ
- 編入する大学を選ぶ前に編入の目的を考えてみましょう!
- 大学編入のときに一番重要なのは情報収集です。大学のHP、編入体験記、志望する研究室は必ず確認しておきましょう!
- 大学によっては出願条件として英語の資格(TOEIC)、クラスの席次(上位◯%以上)、研究室訪問が必要となることがあります。遅くとも4年生の年度始めまでには出願条件を確認し、編入試験に備えましょう!

ライター情報
- – 熊本高専 人間情報システム工学科
- – ハルキ
- – 情報系の高専生。趣味は写真。