高専の進路 高専専攻科とは?

~学べること、メリットやデメリット、進路などの特徴を徹底解説~

今回は、高専の専攻科とはどのようなものなのか、また、専攻科で学べること専攻科進学のメリット・デメリット、修了後の進路の特徴について、解説いたします。この記事を読んで、高専専攻科の存在について知り、進路の一つの選択肢として参考にしていただければと思います!

高専専攻科とは?

高専専攻科は、高等専門学校(高専)の本科5年の教育課程を卒業した学生が、さらに高度な専門知識と技術を学ぶための2年間の教育課程です。高専卒業生が学士相当(すなわち大学卒業相当)の資格を取得することを目指す場として全国51の国立高専全てに設置されています。専攻科に進むことで、学士号取得のために必要な知識や経験を蓄積し、さらに高い専門性を追求することが可能です。

専攻科は、文部科学省により認定された課程であり、専攻科を修了し、必要な単位を取得することで、学士号を取得する資格を得られます。その後、独立行政法人大学改革支援・学位授与機構(NIAD-QE)の審査に合格すれば、正式に4年制大学卒業者と同等の「学士」の学位を取得することができます。更に研究を深めたい場合は、大学院への進学も可能です。

図1 専攻科の位置づけ(国立高等専門学校機構HPより)

専攻科で学べること

専攻科では、学科ごとに特化した専門分野をさらに深く学びます。基本的には、本科時代に学んだ専門的な内容を、研究活動や更なる講義を通じて、深めることができます。

専攻科のメリット・デメリット

続いて、専攻科のメリット、デメリットについて赤裸々に記していきたいと思います!

メリット

  1. 学士号の取得
    • 専攻科修了後、学士号を取得できるため、大学卒業生と同等の資格を得ることができます。
  2. 高度な専門知識の習得
    • 専攻科では本科と比べ、より深い専門性を身につけることができ、特定分野のスペシャリストとしての価値が高まります。
  3. 就職や進学の選択肢が豊富
    • 専攻科での学士号取得により、大学院進学の道が開け、より専門性を高めることができます。専攻科に進学した場合、これまでと環境があまり変わらないことから、継続的に無駄なく必要な学問に取り組むことができ、大学院試勉強や研究活動に比較的没頭しやすいと考えます。
    • 高専の強みで挙げられるのは、何といっても就職率の高さです。本科での就職率は勿論高いですが、専攻科でも同じです。学士号を取得した状態で、大企業への就職が比較的しやすい、といったことは非常においしい話ではないでしょうか、、?
  4. コストパフォーマンスが良い
    • 大学編入よりも学費が抑えられるため、経済的な負担が軽減されます。基本的には、国立大学の年間授業料の約半額が、高専専攻科の年間授業料となっております。
  5. 研究活動を3年間継続することができる
    • ここが、筆者が個人的に専攻科の一番の強みであると考えております。高専の本科5年時(早ければ4年時から)に卒業研究が始まり、多くの人は、専攻科の2年間でも同様のテーマについて研究を継続することができます。すなわち、専攻科修了のタイミング(大学卒業のタイミング)で、既に3年間の専門分野の研究活動を行っていることになります。他の同年代の理系大学生は、大学4年時の1年間しか研究を行えていません。したがって、熱心に研究に打ち込むことができていれば、研究力という点で他の大学生との差別化が大きく図れると思います。こうして磨いた研究力は、大学院入試、あるいは就職活動でも、同年代のライバルと比べ、圧倒的な強みになると私は考えます。これは、大学編入した他の高専本科時代との同期との差別化にもなるといえるでしょう。
  6. 既存の環境で学べる安心感
    • 専攻科では、慣れ親しんだ高専本科時代の学習・研究環境に身を置くことができます。大学編入をする場合は、新たに既存のコミュニティの中に飛び込む形となり、いろいろと不安なことも多くなるかもしれませんが、専攻科の場合は、そうした心配もあまりありません。しかしながら、裏を返せば、新たな環境に触れるチャンスが大学編入と比べると多くないと考えると、デメリットでもあるといえます。進学という選択肢をお持ちで、新たな環境に身を置きたい人は、大学編入もお勧めします。3で書いたように、専攻科に進学した場合、これまでと環境があまり変わらないことから、継続的に無駄なく必要な学問に取り組むことができ、大学院試勉強や研究活動に比較的没頭しやすいと考えます。これに関しては、専攻科の大きな強みだといえます。
  7. 教員との密な関係
    • 高専専攻科は、大学に比べると教員との距離が近いと考えます。これは、研究室などの規模感にも依存すると思うので、一概にすべての専攻科で、そうであるとは言い切れませんが、一般的に普通の大学で、大学4年時に研究する環境と、高専専攻科で研究する環境では、教員との距離感に大きな違いがあるように感じます。高専時代からの教員との関係を活かして、研究や進路相談をスムーズに進められることもできます。

デメリット

  1. 選択肢の限られたカリキュラムの可能性
    • 一部の高専では、専攻科で選べる専攻が限定されている場合があります。専攻科に入ると、異なる学科が統合される形をとる高専もございます。自分の所属する高専の専攻科が、どのような学科形態をとるのか、きっちりと調べておく必要があります。
  2. 学士号取得には追加の申請が必要
    • 学士号を取得するためには、専攻科修了後に学位授与機構の審査に合格する必要があります。こちらについては、年々制度が変化してきており、現在は学位授与のために別途の試験などを受験する必要性はなくなったものの、自らの研究テーマとその成果についてまとめた資料を、学位授与機構に提出し、学士号取得の可否を厳正に審査されることとなります。
  3. 進学や就職先での認知度の違い
    • 一部の企業や大学では、専攻科の認知度が大学卒業ほど高くない場合があります。
  4. 特定分野に偏りがち
    • 特化した学問に集中するため、他分野の知識を得る機会が限られることがあります。他分野への興味があり、学部を超えた専門知識を学びたい人にとっては、そうした学部を超えた授業を受けることができる制度のある総合大学に3年次編入することも一つの選択肢であると思います。

ここまでで、メリット・デメリットを挙げましたが、正直な話、、、執筆者の私は専攻科へ進学し、その後大学院に進学しているのですが、専攻科については、圧倒的にメリットの方が大きいと思います!大学編入ももちろん魅力的で、非常に良い選択であると思うので、比べてどちらが良いか、ということは難しいですが、自分の時間を作りやすいこと(大学編入の場合、本科時代の単位認定があまりなされなければ、編入後の1年目は非常に授業が多くなかなか自己研鑽に時間を費やせない場合が多いとされています)や、環境を変えず、本科時代に培った研究を継続することで研究に磨きをかけることが魅力的であるため、こうしたことを求める方にとっては、専攻科は非常に魅力的な進学先であるといえるでしょう。

修了後の進路について

進学と就職の割合

 先ほどのメリットの内容で少し述べましたが、高専専攻科修了後の進路は大きく分けて、大学院への進学と就職の2つです。

 全国の国立高専における、本科卒業者の進路は、約60%が就職で、約40%が進学(専攻科進学、大学編入学)となっており、この就職と進学の傾向は専攻科でも同様の傾向にあるといえます。一般的に、専攻科修了者の進路の約60%が就職で、約40%が進学(大学院入学)とされています。

図2 高専本科と専攻科の進路状況 (高専概要2024より)

就職率と、主な就職先一覧

 高専専攻科修了者のうち、就職希望者の就職率について示したグラフと、主な就職先を以下に示します。高専専攻科においても、本科同様、高い就職率を維持していることが分かります。

図3 国立高専専攻科修了者の就職率と主な就職先(高専概要2024より)

進学率と、進学先大学院一覧

 高専専攻科修了者のうち、進学希望者の進学率について示したグラフと、主な進学先を以下に示します。高専専攻科においても、本科同様、有名大学への高い進学率を維持していることが分かります。

図4 国立高専専攻科修了者の進学率と主な進学先(高専概要2024より)

まとめ

 ここまでで、高専の専攻科とはどのようなものなのか、また、専攻科で学べることや専攻科進学のメリット・デメリット、修了後の進路の特徴について、解説しました。この記事を読んで、少しでも専攻科について興味を持つ方が増えればと思います!

 高専本科を卒業した後、進学を希望される方は、大学編入という選択肢と共に、是非、高専専攻科へ進学するという選択肢も視野に入れてみてください!

参考文献

国立高等専門学校機構HP 専攻科

・高専概要2024 https://www.kosen-k.go.jp/wp/wp-content/uploads/2024/07/kosengaiyo2024.pdf#page=17

執筆者情報

[出身高専 学科] 奈良工業高専 本科 物質化学工学科 卒業、専攻科 物質創成工学専攻 修了

[氏名]   甲元蓮羽

[自己紹介] ナレッジスター塾講師。出身の奈良工業高専での専門分野は化学工学。現在は大阪大学大学院博士前期課程在学中で、工学と経営学のダブルディグリーで修士号取得のため、日々勉強中。趣味はラグビー観戦、特技は炭酸の一気飲み。