高専なのに文系!?
高専といえばどのようなことを学ぶイメージがあるでしょうか。やはり機械・電気・化学・建築などをイメージする人が多いと思います。しかし!全国には文系の学科を設置している高専が4つ存在します。この記事では、現役文系高専生が、文系学科の概要・詳細と文系学科へ入学するメリットデメリットを紹介したいと思います。▼ナレッジスターではオンライン無料勉強相談も行なっているので、高専入試対策に不安のある方は、ぜひお申し込みください!
▼ナレッジスターではオンライン無料勉強相談も行なっているので、高専入試対策に不安のある方は、ぜひお申し込みください!
全国に4つの文系高専がある!
文系学科といわれる学科は以下の通りです。
①福島工業高等専門学校 ビジネスコミュニケーション学科
②富山高等専門学校 国際ビジネス学科
③宇部工業高等専門学校 経営情報学科
④広島商船高等専門学校 流通情報工学科
それぞれの学科で、ビジネスに関して学べるカリキュラムが構築されており、経営・経済・会計・心理学・人文・英語・情報など、様々な分野が学べます。また、文系学科ということもあり、男女比において女性の割合が高いというのも特徴の一つです。
文系高専の学科を紹介
福島高専 ビジネスコミュニケーション学科 (偏差値64)
概要・どんなことが勉強できるのか
福島高専ビジネスコミュニケーション学科(以下ビジコミ)の特徴は、「英語」「経営」「情報」「経済」「会計」「数理」「人文」といった7つの領域を幅広く学べることです。また、高学年になると、これらの中で特に学びたい科目に絞り、より深く学ぶことができます。
また、低学年(2・3年生)時には留学制度を利用して、1年間カナダで学ぶこともできます。
先輩達のように企業、自治体、国など様々な機関でグローバルに活躍できる人材になれる学科がビジコミです。
特徴的な授業(シラバスから抜粋)
1年次
・コミュニケーション論Ⅰ
コミュニケーション学の基礎となる
①要約力、論理的な記述・発話能力を養うためのトレーニングを行う。
②自分たちを取り巻く環境について様々な視点から知識を得る
2年次
・経営入門Ⅰ
「経営入門Ⅰ」では、「経営」の基本的な枠組み、基礎用語を理解することを目的としています。授業では、経営の基本のポイントを絞り、体系的に学習していきます。
3年次
・プログラミング基礎
C言語を用いてプログラミングの基礎を学ぶ。
4年次
・組織論
経営学を中心に、組織に関する基礎的な知識を学ぶ。
5年次
・国際経営論
組織の経営が国境を越えて行われたときのインパクトや国家間のビジネス環境の違いを認識・理解する。
主な就職先・進学先
福島高専のビジコミの主な就職先・進学先は以下の通りです。
・就職先
アルプスアルパイン、NECフォールディングス、東日本計算機センター、NTT東日本、ひまわり信用金庫、クレハ、福浜第一建設、ココスジャパン、ミネルバ税理士法人、ヤフー、東京ガス、東京都下水道サービス、国家・地方公務員(林野庁 いわき市など)、ハニーズホールディングス、キヤノンアネル
・進学先
福島高専専攻課、小樽商科大学、山形大学、岩手大学、福島大学、お茶の水女子大学、筑波大学、宇都宮大学、午葉大学、静岡大学、名古屋大学、滋賀大学、神戸大学、三重大学、和歌山大学、広島大学、九州大学、中央大学、駒澤大学、関西外国語大学
富山高専 国際ビジネス学科(偏差値64)
概要・どんなことが勉強できるのか
国際的なコミュニケーションの基礎となる英語や環日本海諸国語という、2つの“使える外国語能力”と異文化への寛容性を身につけ、ビジネスに関する専門的な知識を学びます。さまざまな情報を統合して活用する手法やプレゼンテーション技術などを養い、環日本海交流の拠点を目指す富山県を中心として、国際的に活躍し、地域社会や地域産業に貢献できるビジネスパーソンを育成します。
特徴的な授業(シラバスから抜粋)
1年次
・商学概論
本講の目的は、現代社会におけるビジネスのあり方を体系的に理解することにある。産業や消費生活の変化に伴う商品の多様化などについて考察する。また、身の回りにあるモノやサービス、流通をビジネス視点で俯瞰する能力を得ることも期待する。
なお、この科目は、民間企業で実務経験があり、様々な業界の企業と関わっていた教員が、その経験を活かし、経済を構成する「企業・家計・政府」の幅広い観点から、講義形式で授業を行うものである。
2年次
・経済学概論Ⅰ
個々の経済主体の行動に関するミクロ経済学の基礎理論を学び, 現実の経済・産業の現象を理解するための基礎知識を習得する.
3年次
・法学概論Ⅰ
本講義は、法学入門かつ法学概論として法学の基礎的内容と法学的課題を学ぶ。内容としては、法の基礎知識、憲法など法学の基礎的内容を学習する。
4年次
・ビジネスゼミナールⅠ
「ビジネス・ゼミナールⅠ」では、国際ビジネス学科の専門科目を中心に学んだ知識や技能を使って、自分らしい進路の選択について考えることと、これとの連関で適切な卒業研究のテーマを立てることを主な目標としている。そのうち、「ビジネス・ゼミナールⅠ」では前者の将来の進路について考え、これを具体的な行動につなげていくことに力点を置く。
5年次
・異文化コミュニケーション論
授業では、異文化理解やコミュニケーション、英語観、英語文化に関する用語や概念、理論を紹介して、その用語、概念、理論と自分の体験とを結び付け、意味づけるような思考を促します。そうすることで、自分と他者との偏見や差別のない良好な人間関係を構築できる人になることを期待します。
主な就職先・進学先
富山高専の国際ビジネス学科の主な就職先・進学先は以下の通りです。
・就職先
参議院、外務省、経済産業省、国土交通省、防衛省、金融庁、東京税関、大阪税関、国立研究開発法人水産研究・教育機構、国立大学法人東京大学、国立大学法人富山大学、東京都庁、富山県庁、富山県警察、三耐保温、YKK、YKKAP、不二越、ファインネクス、東洋電制製作所、中部電力、北陸電力、東京都下水道サービス、JR西日本ヴィアイン、JALスカイ、コネクシオ、セカンドゲート、マーキュリー、Life Foundation、あて、ラルフローレン、ザ・リッツカールトン沖縄
・進学先
富山高専専攻課、筑波大学、埼玉大学、千葉大学、お茶の水女子大学、東京外国語大学、東京海洋大学、新潟大学、富山大学、金沢大学、名古屋大学、三重大学、滋賀大学、大阪大学、神戸大学、奈良女子大学、長野大学、大阪公立大学、中央大学、日本大学、京都女子大学、関西大学、キャピラノ大学
宇部高専 経営情報学科 (偏差値60)
概要・どんなことが勉強できるのか
経営情報学科では、経営環境の変化、情報技術の進展、経済のグローバル化などの社会動向に対応するために、実践力をもつ「経営のエンジニア」の育成を目指しています。本学科の教育内容は、「経営管理知識」、「情報処理技術」、「数理モデルの構築」及び「国際化知識」の4つに分けられます。1年次から3年次までは、経営管理と情報処理技術に関する基礎教育を行います。これらを基礎として、さらに4年次と5年次で経営工学、システム設計等の演習科目について専門教育を行い、経営情報と数理モデルの融合を図っています。グローバル化に対応した語学の5年間一貫教育にも努めています。
特徴的な授業(シラバスから抜粋)
1年次
・簿記論Ⅰ
簿記の見方・考え方を働かせ、実践的・体験的な学習活動を行うことなどを通して、取引の記録と財務諸表の作成に必要な資質・能力を涵養する。
2年次
・プログラミングⅠ
本科目ではPython言語を用いた基礎的なプログラミングを学ぶ。他の言語と共通するデータ型や制御構造、クラスの概念を学ぶとともに、Python 特有の内包表記や関数のインタフェースの実装法を知る。
3年次
・データベース論
データベースの存在意義を理解し、身の回りで活用されているデータベースの存在に注目できるようになりましょう。また、実際にデータベースを作成し、SQL文の書き方や、データベースの構造を理解することを目的とします。
4年次
・経営戦略論
現代企業が直面している競争環境のなかで勝ち抜き、存続させていくために必要な戦略について学びます。
5年次
・マーケティング論
企業は顧客のニーズを充足させるべく市場調査を行い、製品(商品)計画を立案する。そして、市場とのコミュニケーションを通じて需要を顕在化させることにより、価値ある製品(商品)を顧客に提供していく。そこで本講義では、一連のマーケティング活動に関する理論を理解していく
主な就職先・進学先
宇部高専の経営情報学科の主な就職先・進学先は以下の通りです。
・就職先
GMOリサーチ、ICTコンストラクション、NECネッツエスアイ、NOK、NTTデータMHIシステム、NTTデータフロンティア、サイバーアクセルアドバイザーズ、トクヤマ情報サービス、ニュージャパンナレッジ【2名】、ハイマックス、メンバーズ、宇部情報システム、京セラコミュニケーションシステム、山口産業、神田通信機、西日本オフィスメーション、西部石油、青藍会グループ、東芝ITサービス、日本アイ・ビー・エムテクニカル・ソリューション、日本精蝋、萩市役所、富士通エフサス、富士通ソーシアルサイエンスラボラトリ、富士通九州ネットワークテクノロジーズ、富士通山口情報
・進学先
宇部高専専攻課、九州大学、広島大学、国士舘大学、長岡技科大、北九州市立大学、福島大学、鹿児島大学、広島大学、法政大学、信州大学、大阪大学、下関市立大学、関西大学、奈良女子大学、芦屋大学、豊橋技科大、大阪産業大学、福岡大学
広島商船高専 流通情報工学科(偏差値53)
概要・どんなことが勉強できるのか
流通・ビジネス系および情報・通信系に関わる基本的な知識と技術を身につけ、ICT社会において活躍できるビジネスパーソンまたは情報技術者を目指すことができます。
特徴的な授業(シラバスから抜粋)
1年次
・専門基礎(情報)
Processingによるプログラミングを通して、コンピュータのプログラムのどのように動作するのか仕組みを理解する。また、プログラム開発の基本的な手法を体験的に学ぶ。あわせて論理的思考の修得を目指す。作品作りを通して、課題設定や解決方法を身につけ、作品の発表によりプレゼンテーションスキルを身につける。
2年次
・流通情報工学実習
この授業では、C言語の基礎について学び、論理思考の修得を目指す。
また、PCの基本的操作であるキーボードのタッチタイピングの修得を目指す。
3年次
・財務会計
会計学の基礎知識として商業簿記を理解する。日商簿記3級程度の複式簿記を記帳できるようにするがまずは最低限試算表の作成までは理解する。
4年次
・マーチャンダイジング
流通・ビジネス系科目として、小売業における一連の作業プロセスとしてのマーチャンダイジングの構成要素と全体像を学習します。そのために、小売業の類型、ストアオペレーション、マーケティングンおよび販売・経営管理の概要について基本的なしくみを習得し、その基礎的な知識と技術を流通・ビジネスの実務に応用できる能力(リテールマーケティング(販売士)3級レベル)を身につけます。
5年次
・輸送計画
輸送計画は、社会システムや工学システムを数量的な側面からモデル化し、数理的手法を適用することによって望ましい輸送指針や効率的な輸送方策を見出すための学問である。本講義では、生産や輸送の問題を「いくつかの条件を満たす変数の組のなかで、ある関数の値を最大(小)にするものを求める」という最適化問題の形に記述して、問題あるいはその解のもつさまざまな性質を解析する方法を学ぶ。また、精密な解を求めるための数学的に厳密な算法だけでなく、許された時間内にできるだけ良質の解を得る近似解法についても理解を深め、ロジスティクスなどの現実の問題に応用する能力を養うことを目標とする。
主な就職先・進学先
広島商船高専の流通情報工学科の主な就職先・進学先は以下の通りです。
・就職先
山九、ケイヒン、花王ロジスティクス、川崎陸送、NRS(日陸)、ゲイソー・ロジスティクス、NX(日通)情報システム、NECフィールディング、NTTコムエンジニアリング、CTCテクノロジー、富士通、リコージャパン、旭化成、ダイキンMRエンジニアリング、ディスコ、東洋製罐、トヨタシステムズ、パナソニックオペレーショナルエクセレンス(グローバル調達)、日立ハイテク、東京都下水道サービス、大崎上島町役場、広島県警
・進学先
広島商船高等専門学校専攻科、広島大学、九州大学、神戸大学、東京海洋大学、豊橋技術科学大学、長岡技術科学大学
文系学科へ入学することのメリットデメリット
メリット
高専の文系学科に進むことのメリットは大きく分けて3つあると考えています。
①就職率は約100%!また進学率も高く国立大学への編入がしやすい
②高校生の年齢で、大学で学ぶような専門的なビジネスの知識を得れること
③会計や英語、プログラミングなど就職・転職に有利な知識・スキルを手に入れることができる
やはり高専ですので、多くの企業から求人が来るため、就職率はかなり高いです。また高専5年生から大学の3年生へ編入することが可能で、クラスの約半数の学生が進学をします。神戸大学やお茶の水女子大などの難関大学への編入実績も多く、自分の専門分野を更に研究できます。
また、普通高校では得られないような、ビジネスの知識を手に入れることが出来るのも魅力の一つです。ミクロ経済学・マクロ経済学・経営学・開発学・マーケティングなど、ビジネスパーソンには欠かせない知識を早い段階で手に入れることができます。
さらに、文系学科は会計や英語の勉強をするので、簿記やTOEICなどの資格を手に入れやすいです。TOEICに関しては大学へ編入するときに必要になるため、進学を希望する学生の多くが高得点を目指して勉強を頑張っています。
デメリット
高専の文系学科に進むことのデメリットは大きく分けて3つあると考えています。
①文系は自由度が高いため、専門性が身に付きづらい
②進学の幅が狭まる
③高専を卒業して就職すると給料が低い
文系は理系と違い、レポートの提出や実験など、能動的に行なっていく部分は少ないので、文系学科に通ったけれど、何も身につかなかった…。ということはよくあることです。
高専出身者で文系の学科に進学する人の多くは、経済学部系に進む人が多いです。なぜなら、編入先の大学で単位認定というシステムがあるからです。単位認定とは、高専で取得した単位を大学での単位に変換できるかできないかを決めることです。高専と大学で似ているような科目が多ければ、単位認定はしやすいですが、学部が異なったりすると、単位変換してもらえる科目が少なくなります。卒業できる単位が大学ごとに設定されているため、結果として高専のカリキュラムと似ているような経済学部系の学科へと進学することが多くなってしまいます。
また、文系学科に限らず、高専卒で就職すると準学士の資格が与えられます。そのため大卒で就職する人より給料が低くなることが多いです。
まとめ
今紹介した高専は
①福島工業高等専門学校 ビジネスコミュニケーション学科
②富山高等専門学校 国際ビジネス学科
③宇部工業高等専門学校 経営情報学科
④広島商船高等専門学校 流通情報工学科
の4校4学科でした。それぞれの学科で共通している科目は会計や経済学、経営学などでした。ですが!高専によってそれぞれ強みが違ったり、力を入れている点が異なっているので、自分の進路と向き合って決めることが大切です。