高専入学前に知っておいた方がいい、高専と中学校の違いとは

はじめに

今回は、高専に入学する前の中学生が知っておくべき、高専と中学校の違いについて、詳しく解説させていただきます。高専への進学を控えた皆さんが、スムーズに新しい環境に馴染むためには、入学前に「高専」と「中学校」の違いを知っておくことが大切です。ここでは、環境の違いと意識の違いという観点から、それぞれを細かい項目に分けて詳しく解説します。この記事を読んで、高専生になるための心構えをしていただければと思います!

~高専と中学校の違いについて~

環境の違い~校舎や設備の規模と種類

  • 中学校

中学校の校舎や設備は一般的に基礎教育を支えるもので、教室、体育館、理科実験室、音楽室、家庭科室などが標準的です。設備は学びや部活動を支える最低限のものが整っています。

  • 高専

高専は専門教育を行う学校のため、校舎や設備は実践的な学びに対応しています。例えば、工作実習場、研究室、3Dプリンターや機械加工装置、電子回路を組み立てる実験機、化学実験室、数億円に及ぶ分析装置を取りそろえた機器分析室などがあります。これらの専門設備を使いこなすことで、実務に直結するスキルを学べます。

授業時間とスケジュール

  • 中学校

中学校では1コマ50分の授業が基本で、1日の授業は6~7時間程度です。スケジュールは先生が管理しており、生徒はそれに従って動きます。

  • 高専

高専では1コマ90分の授業が標準で、集中力が求められます。特に、実験や実習は長時間に及ぶことが多く、1日が非常に忙しく感じられるでしょう。また、長期休暇中にも課題が課されることがあるため、学びが途切れることはありません。

授業内容の専門性と進級の難易度

  • 中学校

中学校の授業は基礎学力を養うことが目的で、教科書中心に進められます。義務教育ということもあり、全ての生徒が問題なく進級します。

  • 高専

高専では1、2年生から専門科目が始まり、機械、電気、情報技術、建築、化学、経営などの専門的な内容を学びます。進級基準は単位制であり、一定数の単位を取得できない場合は留年します。特に試験は難易度が高く、普段からの学習が重要です。基本的には、ある科目の最終成績が60点以下であれば、その科目の単位を取得することはできません。学校にもよりますが、著者が通っていた高専では、年間で10単位以上単位を落としてしまった場合、留年が確定するという制度でした。では、9科目までは単位を落とせるのか?というと、そうではありません。科目によっては、1科目で2単位、4単位等の単位数を持つものもあります。したがって、数教科分単位を落としてしまうだけで、留年の可能性は大いに跳ね上がります。
しかしながら、高専では、留年に対する考え方が、あまりマイナスではないです。留年=ダメではなく、理解しないまま次の学年に行くこと=ダメという考え方です。たとえ留年の危機を逃れたとしても、進級することで学ぶ内容のレベルが上がると、更に内容がわからなくなり、取り返しのつかないことになります。その最悪の事態を防ぐため、再度同じ学年を学び直す留年という制度が、積極的に導入、活用されているのです。
また、仮にギリギリ留年を回避したとしても、本科卒業のための条件として、全ての必修科目の単位を取得している必要があります。したがって、数単位を落としながら進級できたとしても、卒業までの間で必ず単位取得のための再試験等を受験し、合格しなければなりません。

校則の緩さ

  • 中学校

学校によると思いますが、多くの中学校では校則が厳格に設定されており、服装や髪型、持ち物に関しても細かい規定があります。

  • 高専

高専では校則が比較的緩く、自由が多いと言われています。身だしなみで言えば、1、2年生のうちは学校指定の制服、3年生以降は私服になることが多いですが、3年生まで制服の高専もあれば、そもそも制服の無い高専もあるため、こちらも各高専によります。頭髪やピアスについても、周りの高校等と比べると比較的自由にすることができると思います。

ただし、自由には責任が伴うため、行動に対する自己管理が求められます。自由=何でもしていい、ということではありません。中学校や高校などでは、「生徒」という立場ですが、高専や大学などでは「学生」という立場となります。やるべきことをきっちりと行い、勉強に支障をきたすことの無い、周りに迷惑をかけることの無いレベルで、校則の緩さを楽しんでください。

男女比率

  • 中学校

ほとんどの中学校では、男女比率はほぼ均等で、どちらかの性別に極端に人数比が偏ることは少ないです。

  • 高専

高専は工学系の学科が多い関係で、男子学生の比率が高い傾向にあります。クラスの9割が男子、という学科もあれば、建築学科や化学系等の学科では女子学生の割合が比較的高い場合もあります。また、ここ数年間で、理系女子、すなわち「リケジョ」が多くなってきているという現状もあり、思ったよりも女子学生が多い、と感じるかもしれません!

部活動やイベント

  • 中学校

運動部や文化部に多くの生徒が所属し、運動会や合唱コンクール、修学旅行などの全校行事が活発に行われます。

  • 高専

高専の部活動は、ロボット研究会やプログラミング部など(名称は様々)、中学校にあるような運動部や文化部のみならず、高専生ならではの専門性を活かした部活動が目立ちます。また、高専祭(学園祭)は学生主体で運営され、技術を駆使した展示が行われます。他にも、運動会の代わりに年に数回、スポーツ大会等も開催されます。好きな仮装をしてこうしたイベントに参加する学生も多く、個性あふれる学生が思いのままに自分を出して楽しめる、そんな素敵な機会だと思います。修学旅行等については、各高専によりますが、実施される高専と、実施されない高専があります。

夏休みの期間

  • 中学校

三学期制(一学期、二学期、三学期)を取る多くの中学校では、一学期と二学期の間の期間、すなわち7月後半から8月末までの約35~40日が夏休みの期間となっています。その間、部活動や旅行、宿題等で過ごす生徒が多いです。

  • 高専

基本的に二学期制(前期、後期)を取っています。高専では、前期と後期の間の期間が夏休みとなります。前期は8月前半に終了し、後期は10月から始まります。したがって、夏休みの期間は8月中旬から9月末までの約1か月半~2か月弱程あります。中学校や高校とは違い、夏休みの期間が少しずれており、かつ長く、大学生等と同じ期間となっていることが特徴です。

学生同士の関わり方

  • 中学校

クラス内は、同じ年齢の生徒同士で構成されています。また、体育祭などのイベントでは、3学年間での縦の交流もあります。

  • 高専

高専では、留年生や社会人入学生、留学生等、年齢や国籍の異なる学生も多く在籍しており、同じクラス内でも、幅広い年齢層の人と交流することができます。また、グループでの実習・実験も多いため、異なるバックグラウンドを持つ学生と協力し合い、課題に取り組む姿勢が重要であるといえます。更に、中学校や高校との大きな違いは、何といっても7学年が同じ学校に在籍しているということ(専攻科2年間も含む)です。部活動でも、中学校と比べ、縦の繋がりの幅が非常に広いです。上級生と関わることで、高専生活やその先の進路をより良くしていくためのノウハウを得ることができるかもしれません。是非、他学年が在籍している組織に身を置き、高専生活をより良いものにしていってください!

教師の役割と接し方

  • 中学校

先生が生徒の学習や生活を細かく指導してくださいます。進路指導や悩み相談にも積極的に関わることが一般的です。

  • 高専

高専の先生は専門的な知識を教える大学教授のような役割が中心です。授業以外の面倒を見てくださることは、中学校の時程多くないように感じます。自主的に相談する姿勢が求められます。

意識の違い

学びへの意識

  • 中学校

与えられた課題をこなす学びが中心で、高校受験、高専受験で合格するための知識の吸収が目的です。全国の同学年が皆同じような内容を学んでいます。

  • 高専

高専での学びは、将来の専門分野への就職や進学に直結しているため、興味を持って主体的に学ぶ姿勢が重要です。その分野のエキスパートになることを目指して入学する学生も多く、モチベーションの高い学生が沢山います。しかしながら、時には留年回避を目標にギリギリを走る学生さんも一定数います。後者の割合は、高学年になるにつれ、減っていきますが(留年するため)、、この記事を読んでいる皆様には、是非最初の段階から、前者になっていただきたいと思います。厳しい環境での学びの末、卒業後は専門分野の知識が必要な企業に就職する人も多くいます。したがって、これまで以上に、自らの将来設計を意識して学ぶ姿勢を持つことが重要です。

自己管理の意識

  • 中学校

先ほども述べましたが、基本的には、義務教育に守られた「生徒」という身分です。比較的管理された環境であり、自由度は低めです。

  • 高専

課題や授業スケジュール、進級条件などを自分で管理する必要があります。特に実習や実験のレポート作成では計画性が問われます。また、中学校や高校と比べて自由度が高い一方で、自分の行動に対する責任を問われる場面が増えます。遅刻や欠席が進級や卒業に影響するため、自己管理能力が求められます。

将来への意識(進路意識)

  • 中学校

高校・高専受験を意識する程度で、職業や専門分野についてはまだ漠然としている生徒が多いです。

  • 高専

卒業後の進路(就職 or 大学編入 or 専攻科進学)を早い段階で考え始める必要があります。本科3、4年生になれば、企業研究やインターンシップの準備、進学のための受験勉強も重要です。また、下級生からの成績が継続的に良いと、推薦制度を用いて就職試験や大学編入試験、専攻科進学試験を優位に進められる場合があります。将来を意識して、下級生のうちからクラス内で上位の成績を狙おうとする学生も多いです。

まとめ

高専は、中学校と比べて学びや生活のスタイルが大きく異なります。その分、自由度が高く、将来の目標に向けた専門的な学びができますが、自主性や責任感が重要になります。新しい環境での成功のために、事前に心構えを持ち、準備をしっかり整えましょう!

執筆者情報

[出身高専 学科] 奈良工業高専 本科 物質化学工学科 卒業、専攻科 物質創成工学専攻 修了
[氏名]   甲元蓮羽
[自己紹介] ナレッジスター塾講師。出身の奈良工業高専での専門分野は化学工学。現在は大阪大学大学院博士前期課程在学中で、工学と経営学のダブルディグリーで修士号取得のため、日々勉強中。趣味はラグビー観戦、特技は炭酸の一気飲み。

\高専合格者へ!/