高専から大学編入して変わったこと、変わらなかったこと。大学編入のリアルとは!?

はじめに

 高専を卒業する学生の半数近くが大学編入をしているのは言うまでもありませんが、あなたは大学編入、したいですか?
 さて、筆者は木更津高専から富山大学に編入し、現在は大学院に在籍しています。編入した理由は単純で、ロボコンを続けたかったから。大した理由でもございません。しかし、やっぱり編入して良かったです。するべきです。編入。
 とはいえ、高専から大学への進学は、単なるステップアップではありません。高専卒と大学卒、そして多くの編入生が目指す大学院卒では、社会での立ち位置が異なります。そんな違いも頭の片隅に置きながらこの記事を読んでいただき、あなたの進路を決める一助になれば幸いです。

大学だからこそ変わったこと、できること

 この章では、大学だからこその変化を【研究編】、【私生活編】に分けて紹介いたします。しばしば大学のようだと言われる高専ですが、それは高校と比べての話。高専と大学は全く別の学校です。加えて多くの学生が一人暮らしを始めるのもこのタイミングかと思います。どんな違いがあり、どんなことができるのか。大学生の特権をお話しします。

予算も規模も桁違い!【研究編】

 高専と大学の一番の違いは、やはり研究力です。高専にも研究室はあり教員も学生も研究を行ってはいますが、その規模は大学には敵いません。高専で行う卒業研究は使える設備も限られ、予算もわずかです。もちろん大規模な設備を所有している研究室もありますが、すべての学生がそのような環境で取り組めるわけではありません。予算についても、高価な機材や部品を買う余裕はなく、大抵はありあわせの物品でやりくりする必要があります。対して大学は高専よりも潤沢な予算があり、機材や設備、部品に至るまで多くの予算をかけることができます。特に比率の大きいのが企業との共同研究による予算です。一社につき年間100万円以上の予算を頂く場合も珍しくありません。もちろん共同研究として頂いた予算はなんにでも自由に使うことはできませんが、研究室を支える大切な予算源となっています。逆に言えば、企業がそれだけの予算を組んでくれるだけの価値が大学の研究にはあるということです。そう聞くと取り組んでみたくなりませんか?

初めてのアパート暮らし【私生活編】

 大学生といえば初めての一人暮らし。初めての一人暮らしといえば大学生。いいや、今寮暮らしだから初めてじゃない?そんなことはありませんよ!寮とアパートじゃ生活がまるで違います。大学生ならではも含めてお伝えします。
 寮生活から一人暮らしになって一番実感するのが、いかに寮生活が健康的だったかです。2時に消灯。毎日決まった時間にちゃんとした食事が用意され、朝は点呼に起こされる。これがいかに筆者の健康を助けていたか、、、。一方大学生になってからというもの、自炊は続かず学食だよりで授業がなければ昼まで眠り、課題などに追われて寝るのは明るくなってからなんてことも多々あります。そういう今も午前3時。ダメです、ホント。

 とは言っても、一人暮らしの良いところもあります。一番はやはり、時間の使い方が自由な点でしょう。例えば筆者は自転車も趣味なのですが、夏は特に夜中に走ることも多いです。暑くないですし、車も少ないので快適です。寮にいては点外(と筆者は言っていましたが、夜の点呼後の外出のことです。これは高専生の共通でしょうか?)になってしまいますからね。また、当たり前ですが持ち込み禁止の物品がないのも嬉しい点です。ガスバーナーなんて寮には持ち込めませんからね。大学生だからこその沢山の時間を好きに使える自由の基礎は、縛られる物のない一人暮らしにあるのかもしれません。

高専から続くこと、続けられること

 ここからは、高専から変わらないことについて紹介していきます。筆者は環境の変化が嫌いなタイプではなく、むしろ様々な場所を体験したいタイプなのですが、大学編入を考える人の中には大学の環境に不安を覚える人もいるかもしれません。(だからって就職してしまえとはならなさそうですが。)気休めになるかはわかりませんが、高専の好きだった色が大学にもあるとわかれば大学編入により前向きになれますでしょうか。

意外と変わらない【授業編】

 研究がしたくて大学に入ったとしても、勉強はせねばなりません。単位は取らねば卒業できませんし、順位がなければ院試の推薦ももらえません。しかし実際のところ、授業の雰囲気自体は高専とさほど変わりません。これが良く聞こえるか悪く聞こえるかは人それぞれでしょうが、少なくとも編入できるだけの学力があれば心配はないでしょう。

 ところで、高専にも実験実習や課題研究といった楽しい授業がありましたね。大学では研究ができるので心配はないでしょうが、富山大学の楽しい授業を一つ紹介しましょう。「創造工学特別実習」です。4人程度のグループを組み、2.5万円の予算でアイデアにあふれたプロダクトを作るという授業です。その成果を発表し、他グループや学外の来場者からの票を得られれば、さらに2.5万円の予算を頂き新潟大学、長崎大学との合同発表に行くことができます。筆者は全翼機の模型飛行機を製作し、長崎で発表しました。学校が旅費を持ってくれるので、自由時間は少ないですがタダで旅行ができて得した気分でした。このように大学では自主的にプロジェクトを進めるような授業もあり、もし時間と才能を持て余しているのなら、それを発散する場は十分にあるのです。

よりどりみどり【課外活動編】

 題によりどりみどりと書いた通り、大学では多彩な課外活動に取り組むことができます。それこそ高専の比ではありません。なぜ変わらないことの枠に書いたかというと、筆者が高専から継続してロボコンに参加したというだけではあるのですが、高専で取り組んでいたことにももちろん取り組めるということです。総合大学であればそれだけ、様々な選択肢があります。部活、サークル、学生団体、どれを選んでも構いません。編入だからといって臆する必要もありません。文系理系の壁もありません。高専出身ではありませんが筆者の周りにも、他キャンパスの部活に参加し院生になっても継続している人もいます。ぜひ皆さんが編入したあかつきには、その青春を捧げる場所を探してみてくださいね。ありますよ、青春。

大学院を目指すなら

 高専から大学に進学した場合、多くの学生が大学院を目指すと思います。筆者も大学院に進学しましたし、みなさんにも目指してほしいです。大学院ではより専門的な知識をつけ、さらに研究に特化した学校生活になります。高専から大学への編入が単なるステップアップでないように、大学から大学院への進学もまた自身の価値を改める選択になるのです。

より研究に特化した、特別な人材に

 大学院では主に研究を行います。学部では勉強が本文でしたが、大学院では研究こそが学校生活の主軸になります。さらに、大学院では分野に対する成果が求められ、学会での発表を多くの学生が経験します。単に学ぶだけの人ではなく、研究を通して社会に貢献するのが大学院生なのです。
 卒業後の進路もまた、学部卒と院卒の修士、博士では異なります。学部卒に求められるのは労働力であり、勤勉さや広い知識などが評価されます。しかし院卒に求められるのは研究力や分野に対する専門知識になり、替えの利かない人材としての価値が評価されるようになります。どのような人間になりたいかは人それぞれであり、現場が好きな人もいるでしょう。だからこそ、筆者は高専卒や学部卒で就職することを否定しません。ただ筆者はみなさんに研究や開発で社会を引っ張る人間になってほしいと願い、編入、そして院進を勧めているのです。

対して授業は幅広く取れる

 大学院では専門性が高まると説明しましたが、対して授業を取れる分野は広くなります。というのも、大学院の研究科は複数の分野が複合されており、いままでかかわりの無かった授業も開講されるのです。開講される授業は専門性の高いものも多く、決して簡単な内容ばかりではありませんが、自身の専門外の授業を受ける貴重な機会にもなります。自身の分野を突き詰める中で、よその分野を覗き見るのも楽しく良い経験になります。

無料勉強相談って??

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まとめ-優秀な人から貴重な人になるために

 高専と大学、大学院の違いや大学の楽しさは伝わったでしょうか。筆者はしつこく編入、進学を勧めましたが、結局はみなさんがどのような人を目指すか次第です。高専を卒業するだけでも世間では十分に優秀な人材です。そこから専門的で貴重な人材を目指すも良し、就職してバリバリ働くのも良しです。この記事が、みなさんが進路を決める助けになったのなら嬉しいです。何度も鬱陶しいでしょうが、ぜひ大学を目指してください!

ライター情報

[出身高専 学科] 木更津工業高専 電子制御工学科 卒業
[氏名]   鈴木利久
[自己紹介] 木更津高専ではロボコンに取り組み、機械設計を行っていました。その後編入した大学でもロボコンに取り組み、大学院ではロボット分野の研究をしています。機械・電気・情報を問わず、ものづくりの楽しさが広まると嬉しいです。