
はじめに
「レポートが終わらない」「テスト範囲が広すぎる」。 現役の高専生にとって、日々の生活は課題との戦いかもしれません。しかし、高専を卒業し、社会に出たり大学へ編入したりした瞬間に、多くの先輩たちがふと気づくことがあります。
それは、高専時代、実はものすごく自由で恵まれた環境にいたということです。
「あの時、時間をもっと有効に使っておけば……」という後悔は、卒業してからでは取り返しがつきません。そこで今回は、多くの高専卒業生が口を揃えて言う「在学中にやっておけばよかったこと」をランキング形式で紹介します。これを読んでいるあなたが、卒業式で「やりきった!」と胸を張れるためのヒントになれば幸いです。
高専卒業後に「もっとやっておけばよかった」と思うことTOP5
ここからは、実際に社会に出たOB・OGや、大学編入組が痛感するリアルな後悔を5位から順に発表します。
第5位:クラブ活動・部活動や友人との交流
高専は5年間クラス替えが少ない(あるいは全くない)ことが多く、気心の知れた仲間ができる一方で、人間関係が固定化されやすいという側面があります。
社会に出ると、エンジニアだけでなく、営業職、デザイナー、あるいは全く異なるバックグラウンドを持つ人々と協業することになります。高専時代に学科やいつものメンツの殻に閉じこもっていた人は、新しい環境でのコミュニケーション構築に苦労することがあります。
現役生へのアドバイス
- 部活動や同好会に参加する
学科や学年を超えた縦横のつながりは、卒業後も技術的な相談相手や仕事のパートナーとして宝になります。
- 学外のコミュニティに出る
インカレサークルや地域のボランティア、勉強会など、高専以外の学生や大人と話す機会を意識的に作ってみましょう。
第4位:英語力の強化
エンジニアだから技術さえあればいいというのは大きな間違いでした。 最新の技術ドキュメント、ライブラリの一次情報、学会での質疑応答──これらはすべて英語です。翻訳ツールは優秀になりましたが、エラーログを瞬時に読み解くスピードや、海外の技術者と議論する力はツールだけでは補えません。
また、大学編入試験や大学院入試、就職活動においても、TOEIC等のスコアは必ず求められます。「もっと早くからコツコツやっておけば、直前に慌てずに済んだのに」という声は後を絶ちません。
現役生へのアドバイス
- 技術書を英語で読む
自分の好きなプログラミング言語や技術のドキュメントを、恐れずに原文(公式ドキュメント)で読む癖をつけましょう。
- TOEIC対策は早めに
4年生になってから焦るのではなく、低学年のうちからゲーム感覚でスコアアップを狙いましょう。
第3位:形に残るアウトプット(大会・作品・成果物)
授業で多くの実験や実習を行いますが、就職活動や編入面接で「学生時代に何を作りましたか?」と聞かれた際、「授業の課題で作ったもの」しか答えられないと、アピールとしては弱くなってしまいます。
自分から能動的に動いて作ったものの経験値は圧倒的です。プロコン、ロボコン、デザコン、高専大会、ハッカソンなどの大会出場経験や、個人的に開発してWeb上に公開したサービスなどは、技術力の証明になるだけでなく、完成までやり遂げる力の証明になります。
現役生へのアドバイス
- 未完成で終わらせない
どんなに小さなアプリや工作でも、他人が使える・見られる状態まで仕上げる経験を積みましょう。
- コンテストへの挑戦
失敗しても構いません。チーム開発や納期のある開発経験は、社会に出てから即戦力として評価されます。

第2位:数学・物理の基礎原理の深い理解
意外かもしれませんが、技術的なスキル以上に後悔の声が多いのが基礎科目です。 高専では早期から専門科目を学びますが、その反面、その根底にある数学や物理の理論が公式の暗記や単位を取るための勉強で終わってしまいがちです。
しかし、AIや高度なシミュレーション、新素材開発など、先端技術に触れれば触れるほど、必要になるのは線形代数、微積分、物理法則などの基礎体力です。「なぜこのアルゴリズムで動くのか」を理解するには、基礎理論が欠かせません。社会人になってからこれらを学び直すのは、時間の確保が難しく、非常にハードルが高いのです。
現役生へのアドバイス
- 「なぜ?」を突き詰め
公式を覚えるだけでなく、導出過程や物理的な意味を理解しようと努めてください。
- 専門書への挑戦
授業のテキストだけでなく、少し背伸びをして大学レベルの専門書を読み解く力をつけておくと、将来必ず役に立ちます。
第1位:長期休暇をフル活用した旅や大型体験
堂々の第1位は、勉強でも技術でもなく、時間の使い方です。
高専の夏休みや春休みは非常に長いです。一方で、社会人になると、どんなにホワイト企業でも「1ヶ月休んで海外を放浪する」「自転車で日本一周する」といった長期の休暇を取ることはほぼ不可能です。
お金がないのは言い訳になりません。社会人になればお金は稼げますが、若さと時間だけはお金で買えません。 青春18きっぷでの貧乏旅行、海外へのバックパッカー、免許合宿、あるいは何週間も部屋にこもって一つの趣味に没頭すること。これらは今のあなたにしかできない特権です。
現役生へのアドバイス:
- 遠くへ行く
自分の知らない土地、文化、人、空気に触れてください。その経験が、将来の視野の広さやタフさにつながります。
- 非日常に飛び込む
インターンシップや留学など、普段の学校生活では味わえない環境に身を置いてみましょう。
まとめ
高専生活の5年間は長いようで、本当にあっという間に過ぎ去ります。
「あの時やっておけばよかった」という後悔は、卒業してから気づくものです。しかし、この記事を読んだあなたは、今から行動を変えることができます。
勉強も、遊びも、趣味も。 高専生の間に、ぜひ一つでも多くのアクションを起こしてみてください。その経験は、間違いなくあなたの未来を支える財産になります。

ライター情報
熊本高専 人間情報システム工学科
ハルキ
情報系の高専生。趣味は写真。











