【高専の数学】高校数学とどう違う?最初に戸惑うポイントまとめ

はじめに

高専生活を送る中で、ふとこんな素朴な疑問やモヤモヤを抱いたことはありませんか?

  • なんで高専の数学はこんなに爆速で進むの?
  • 将来エンジニアになるのに、なんで手計算でチマチマ証明しなきゃいけないの?
  • 普通高校の友達は赤点30点なのに、なんでうちは60点も取らないと留年なの?

この記事では、そんな「高専あるある」な疑問の裏にある、カリキュラムの本当の意図や、成績評価の本質について解説します。これを知っておくだけで、日々の授業の見え方がガラッと変わるはずです。

カリキュラムと教科書の決定的な違い

普通高校と高専、やってることは同じ勉強に見えて、実はルールも内容も全く違います。まずはその違いを見てみましょう。

教科書の違い

高専の教科書(大日本図書など)を開いて、「愛想がないな」と思ったことはありませんか? 高校の教科書のようなカラフルな図解やキャラの吹き出しはありません。 これは、高専生が生徒ではなく学生として扱われているからです。現場の専門書や論文には、親切な解説なんてありません。無機質な数式や定義からロジックを読み取る訓練が、すでにここから始まっているのです。

進度の違い

進度はジェットコースター並みです。高校生が3年かける数学を、高専では2年ちょっとで終わらせます。 特に低学年は、毎週新しい単元が出てくるので、一度風邪で休むと何をやっているのか分からなくなります。これは「早く終わらせて、早く専門科目の面白いところ(ロボット制御やAI開発など)に入りたい」という高専特有の事情によるものです。

学ぶ内容の違い

高専は文科省の学習指導要領に縛られない無法地帯(いい意味で)です。 だから、先生の専門分野によって授業の濃さが全然違います。「隣のクラスはやってないのに、うちは大学院レベルの証明までやる」なんてザラです。逆に、工学ですぐに使わない場合の数などはバッサリ省略されることも。この偏りこそが、高専の面白さであり怖さでもあります。

何のために学ぶのか?

専門科目との対応

高専の数学は、実はすべて専門科目の伏線です。 いま苦しんでいる微分方程式は、電気回路のスイッチを入れた瞬間の挙動を知るための道具。フーリエ変換は、スマホの通信や画像処理の根幹技術です。 授業のタイミングが合わず、「数学で習う前に専門科目で謎の公式として出てくる」という理不尽なイベントも発生しますが、後で必ず「あれはこれだったのか!」と伏線回収される瞬間が来ます。

複素数・行列の重要性

特に複素数行列は、高専生の生命線です。 電気は見えない複素数で回っているし、ロボットの関節の動きは行列で計算します。これらは単なる計算ドリルではなく、エンジニアが世界を記述するための言語そのもの。ここをサボると、高学年の専門科目で話が全く通じなくなってしまいます。

学生とテストのリアル

高専のテストが厳しいのには、それなりの理由があります。

60点未満は赤点

「半分できてるのに赤点なんて厳しすぎない?」 と思うかもしれません。でも、エンジニアの仕事で考えてみてください。「強度が60%の橋」や「たまに誤作動するブレーキ」を作られたら困りますよね? 高専の60点ラインは、「人命や社会インフラに関わる技術者になるなら、最低でも6割は完璧に理解していないと現場に出せない」という、プロとしての品質保証ラインなのです。

過去問の重要性

ここで頼りになるのが過去問です。 これは単なるカンニングではありません。「限られた時間で、この先生は何を重要視しているのか(証明なのか、計算なのか)」を分析する情報戦のスキルです。膨大な範囲を効率よく攻略し、生き残るための術を学ぶのも、高専生活の重要な訓練です。

大学受験がないメリット・デメリット

メリットは、受験のための点取りテクニックではなく、自分の好きな技術に没頭できること。 デメリットは、基礎学力の中だるみ。「計算はできるけど、なんでそうなるか説明できない」状態になりがちです。受験がない分、自分で自分を律して理屈を理解しようとしないと、5年生になった時にスカスカの知識になってしまいます。

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戸惑うポイントまとめ

最後に、多くの新入生が最初に直面する「高専数学の罠」をリストアップしました。これらは個人の能力不足ではなく、高専というシステムの構造的な特徴です。「自分だけじゃないんだ」と知っておくだけで、心の準備が全く違ってきます

  • 魔の90分授業とスタミナ切れ
    学までの45分授業から一気に倍増します。特に数学の後半45分は集中力が途切れやすく、ボーッとしている間に置いていかれるロスタイムが発生しがちです。
  • 先生ガチャによる授業の濃淡
    文科省の縛りがないため、担当教員の専門分野によって「隣のクラスより遥かに難しい証明をやる」といった属人化が頻繁に起きます。
  • 確率・統計などの不在
    工学的優先順位の関係で、普通高校生がやる「場合の数」「整数」「データ分析」などは低学年でスキップされがちです。編入や就職試験のSPIで慌てないよう注意が必要です。
  • 計算ドリルでは通用しない記述力
    答えが合っていても、定義に基づいた論理構成(答案の書き方)ができていないと点数がもらえません。「計算はできるのに証明が書けなくて赤点」は高専特有の現象です。
  • 専門科目による公式のフライング
    数学で習う前に、物理や電気回路でその公式を使う事態が発生します。「進度が噛み合っていない」ことに戸惑いますが、そういう仕様だと割り切りましょう。
  • 留年理由No.1は数学
    専門科目は大好きで優秀なのに、基礎数学の60点の壁を超えられず足切りになるのが王道の留年パターンです。再試も高難易度なケースが多いため、油断は禁物です。

まとめ

この記事でお伝えしたかったのは、一言で言えば高専の厳しさには、ちゃんとした理由があるということです。高専の授業は、単なる高校生の勉強ではなく、最初から現場で生き抜くための「エンジニアの職業訓練」として設計されています。愛想のない教科書も、爆速の授業進度も、そして60点未満は赤点という厳しい基準も、意地悪で設定されているわけではありません。すべては将来、社会インフラや人命を預かる技術者としての信頼性を担保するための、プロとしての最低基準なのです。
低学年の頃に苦しんだ理不尽な証明や、厳しい基礎学習。それらはすべて、正解のない「卒業研究」というラスボスに挑むための、論理的思考力を鍛える筋トレでした。これまでの苦しみは、決して無駄な嫌がらせではありません。すべては、最後に待ち受ける卒業研究を乗り越えるための伏線です。自信を持って、その伏線を回収しにいってください!

ライター情報

熊本高専 人間情報システム工学科
ハルキ
情報系の高専生。趣味は写真。

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