高専シンポジウムってなに?高専の学会発表とは?

高専には高専生だけが集まる高専シンポジウムという学会発表が年1度開催されます。
一体どのような学会発表なのでしょうか??

高専シンポジウムとは? 

高専シンポジウムは、全国の高専生・教員が集まり、自身の研究成果を発表・討論する学会形式のイベントです。1996年に久留米高専が呼びかけて第1回が開催され、その後回を重ねて全国的に発展してきました。多くの高専生・専攻科生が参加し、高専機構や産学官からの発表、特別講演も組み込まれます。たとえばある高専では「高専シンポジウムとは全国の高専生が集まり対外的に研究発表と討論するイベント」と説明しています。第22回三重大会では口頭発表271件、ポスター発表276件と盛況でした。高専シンポジウムは、高専教育機関としての研究・教育活動を外部に発信し、学術交流を深める場となっています。

目的と意義

高専シンポジウムは、高専固有の研究と地域貢献をアピールする場として設けられています。開催趣旨には「各校の特色ある研究成果を発表・PRし、高専教育に関する学術研究の普及に努め、地域産業・行政・教育機関・市民との連携を密にすること」が掲げられています。また、学会やフォーラムの起点として「学生と教員の研究・教育の交流並びに親睦の場」を目的として生まれたとされています。こうした場を通じて、学生は研究成果を発表する技術を学び、教員は他校との共同研究・産学連携の機会を得ます。産学官連携の強化や「リフレッシュ教育」(地域還元型教育)の理念にもマッチしており、高専の研究成果を地域社会に還元する重要な役割を担っています。

開催形式

発表形式

口頭発表(講演)は1件あたりおよそ10~15分(質疑応答含む)で行われ、ポスター発表はA0サイズ(縦)で掲示します。第28回では口頭発表180件、ポスター発表120件以上を擁しました。

開催形態

例年1日開催(9:00~17:00)で、現地会場(コンベンションセンターなど)とオンライン配信を併用するハイブリッド形式が一般的です。第30回(岡山)では現地発表とMicrosoft Teamsによる同時配信を組み合わせました。各会場では複数のセッションが組まれ、記念講演や座談会が設けられることもあります。

発表内容

発表の行われる内容は多岐にわたります。第30回(2025年)の発表を抜粋すると

  • 「イオン液体を担体として用いた乳化液膜によるロジウムの抽出」:化学
  • 「タイ高専からの編入学生を支援するチューター学生の取り組み」:教育
  • 「横風の影響を考慮した競技用ソーラーカーの設計」:機械
  • 「機械学習を用いたイベントカメラの画像再構築モデルに関する研究」:情報
  • 「竹駒神社楼門の文化財的価値に関する研究」:建築

など分野を横断した幅広いテーマで発表が行われます。

準備期間

開催数ヶ月前から参加登録・要旨提出が始まり、受理後に発表資料(パワーポイントやポスター)を準備します。発表者は指定の時間に会場に集合し、口頭発表者はPC画面共有で講演、ポスター発表者は定刻までにパネルにポスターを貼って質疑応答を受けます。ポスター発表の場合、現地までポスターを持参する必要があります。

参加条件

高専シンポジウムに参加するために必要な条件はありませんが、口頭発表・ポスター発表で発表賞にエントリーするためには発表者が高専本科生・専攻科生である必要があります。募集要項によると高専シンポジウムには何年生でも参加できますが、研究成果の発表を行う必要があるため高専本科の高学年や専攻科生が多く参加する傾向があります。過去の記録を調べてみると高専本科3年生が発表をしたという記録があったので、研究成果があると学年問わず参加することができます。

出費

高専シンポジウムに参加するために必要な交通費・宿泊費は高専や研究室によって支給されます。もし高専シンポジウムのための支援がなかったとしても、学会発表の支援や研究費から支給されることが多いです。高専機構から、3万円支給されます。ただし、領収書の提出など手続きが必要となります。

過去の開催

高専シンポジウムは全国各地で開催されてきました。第1回は1996年に久留米高専で開催され、以降は各校が持ち回りでホスト校を務めています。例えば、第20回(2015年)は函館高専で開催され、物質工学科の学生がポスター賞を受賞しています。直近では第28回が鳥取県米子市、第29回が新潟県長岡市、第30回が岡山県岡山市で開催されました。他にも熊本(熊本電波高専)や神戸(神戸高専)、富山(高岡高専)など全国の高専が過去に開催例を持ち、回を重ねるごとに参加校・発表件数が増加しています。

参加者の声

参加した学生からは「初めての対外発表で緊張したが、堂々と研究成果を発表できた」、「雪で会場到着が大変だったが、無事発表を終えられた」といった声が寄せられています。また、ある受賞学生は「理事長賞を頂戴し大変光栄です。学外で発表経験を積める機会に感謝し、今後も研究に精進します」とコメントしています。これらの声から、参加者はシンポジウムを通じて自分の研究を広く発表できた喜びや、自身の研究意欲の向上を実感しています。

高専の学会発表とは?

高専生・教員は高専シンポジウム以外にも、さまざまな学会で発表の機会があります。国内の学術系学会(機械・電気・化学・土木・数学などの専門学会)や日本高専学会(高専教職員・学生による研究発表の場)の年次大会に参加し、論文発表やポスター発表を行っています。例えば、ある高専校では学生が「機械学会年次大会」、「電気関係学会関西連合大会」、「数学講演会」、「化学工学会学生発表会」など多岐にわたる学会で発表した記録があります。また、国立高専機構主催の国際シンポジウム(KRIS)も始まり、高専研究を世界に発信する場が整備されています。このように学会発表を通じて、高専研究は国内外の研究者や企業にも広く共有され、学生は学問分野の最先端に触れることができます。

発表の流れ

発表を行う場所によって異なりますが、発表準備から当日までの基本的な流れは以下の通りです

  • 要旨提出・登録:開催案内に従い、締切までに発表の要旨(英文・和文)を提出し、参加登録を行います。
  • 発表資料作成:口頭発表の場合はスライド(パワーポイント)を、ポスター発表の場合はA0縦サイズのポスターを作成します。
  • 当日受付・準備:会場に到着したら名札を取得し、指定会場・座席で受付します。口頭発表者は指定の部屋でPCとマイクを使って発表し、ポスター発表者はパネルの前でポスターを掲示します。
  • 発表・質疑応答:口頭発表は1人10分(質疑応答4分)程度で行われ、座長が進行します。ポスター発表はセッション中にポスター前で質疑応答を行います。
  • 表彰:終了後に発表賞(後述)が発表され、優秀者には表彰状が送られます。

口頭発表とポスター発表のそれぞれのポイントについて

口頭発表

口頭発表は、スライドを用いて聴衆の前で研究内容を説明する形式です。この形式は、卒業研究の予行練習として非常に有効です。発表者は、研究の背景、目的、方法、結果、考察、結論を論理的に構成し、限られた時間内で効果的に伝えるスキルを養うことができます。また、質疑応答を通じて、研究内容に対する多角的な視点や新たな課題を発見する機会にもなります。

口頭発表を成功させるためには、以下のポイントに注意すると良いでしょう

  • スライドの簡潔さ:1スライドにつき1つのメッセージを心がけ、視覚的にわかりやすい資料を作成する 。
  • 一貫した構成:研究の背景から結論までを一貫した流れで説明し、来場者の理解を促す。
  • リハーサルの徹底:発表時間内に収めるため、事前に何度も練習を重ねる 。

ポスター発表

ポスター発表は、研究内容をポスターにまとめ、会場内で参加者と直接対話しながら説明する形式です。発表者は、ポスターの前で来場者の質問に応じたり、研究内容を説明したりします 。この形式の最大の特徴は、聴衆との双方向のコミュニケーションが可能である点です。参加者は興味のあるポスターの前で立ち止まり、発表者と直接意見交換を行うことができます。これにより、研究内容に対する具体的なフィードバックや新たな視点を得ることができます。

ポスター発表を効果的に行うためには、以下のポイントに注意すると良いでしょう

  • 視覚的に分かりやすいデザイン:誰にでも分かりやすいデザインを心がけ、図やイラストを適度に使用する 。
  • 簡潔な説明:最初の1分で研究の目的や結論を端的に伝え、来場者の興味を引く 。
  • 積極的な対話:来場者との対話を通じて、研究内容に対する理解を深め、ネットワークを広げる。

成果と評価

高専シンポジウムでは、優秀な発表に対して各種の発表賞が授与されます。理事長賞(高専機構長賞)や各協賛大学の学長賞、さらには高専シンポジウム協議会会長賞などが設けられています。例えば第30回では長岡技術科学大学学長賞、豊橋技術科学大学学長賞、高専機構理事長賞、協議会会長賞などが計4件発表されました。第28回では参加学生が協議会会長賞(理事長賞)を受賞するなど、高専内外からの評価につながっています。

これらの賞は発表者の研究業績を顕彰するもので、受賞した学生は履歴書・研究業績に記載するなど進路にも好影響を与えます。受賞学生の声としても「大変光栄」、「今後も社会貢献のため研究に精進する」といった前向きな意見が報告されています。

まとめ

高専シンポジウムは、高専教育の特色である5年間の学びの集大成を学生自らが発表し共有する貴重な機会です。学生はシンポジウムを通じて研究報告のスキルを身につけ、全国の高専や企業とつながることで視野を広げることができます。対照的に「学会発表」は学外の専門学会に参加することを指し、こちらも学生の学術的成長に寄与します。いずれも高専生の学びを社会に発信する場であり、プロコンや卒業研究発表会(学内イベント)とは異なり、学術交流と研究成果の客観的評価が重視されます。高専生には積極的な参加が期待されており、研究テーマの発表機会としてぜひ活用してほしいイベントです。積極的に参加しましょう!

ライター情報

熊本高専 人間情報システム工学科
ハルキ
情報系の高専生。趣味は写真。

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