神山まるごと高専 高専入試の過去問分析と傾向を解説!

神山まるごと高専とは?

 神山まるごと高専について紹介する前に、そもそも高専ってどんな学校かご存じですか?

 高専とは「高等専門学校」の略で、中学卒業後に入学できる5年制の学校です。その多くが国立であり、ほとんどが工業系の学科で構成されています。従来の高専では実践的な技術者を養成することを目的として、高校と大学を合わせたようなカリキュラムが組まれています。

 ここまではご存じの方も多いかもしれません。しかし、神山まるごと高専は従来の高専とは特徴や雰囲気が大きく異なります。ここでは、そのコンセプトやカリキュラムなどの特徴と従来の高専との違いについて解説していきます。

概要

 神山まるごと高専の正式名称は「神山まるごと高等専門学校」で、徳島県名西郡神山町にキャンパスがある私立の高等専門学校です。学科はデザイン・エンジニアリング学科の1学科のみで、各学年約40名の1クラスで構成されています。5年間の全寮制で、授業に現役の起業家を招くなど、卒業までの5年間で起業家精神を養います。また、目標として卒業生の4割が実際の起業家となることを掲げています。

特徴

コンセプト

 神山まるごと高専は「テクノロジー×デザインで人間の未来を変える学校。」をコンセプトにした、テクノロジーとデザイン、起業家精神を一度に学ぶ学校です。

 インプットだけでなくアウトプットを重視した授業を通して、様々な分野を学問として学ぶだけでなく、実践的な知識やスキルを身に付け、15歳から20歳までの5年間で未来を変える力を身につけた独自の人間を育むことを目標にしています。

ミッション

 神山まるごと高専のミッションは「モノをつくる力で、コトを起こす」というものです。モノをつくる力を身につけるインプットと、その力を駆使して、ほしい未来を形にしながら世の中を変えるほどのコトを起こすアウトプットをまるごと体験でき、人生を切り拓く自信を掴み取ることのできる場になることをミッションにしています。

キャンパスライフ

 神山まるごと高専は概要でも説明したように5年間の全寮制の学校です。神山町の自然に囲まれた環境で、起業家との交流や自ら生み出す経験ができるのが、他の高専、ほかの学校にもない神山まるごと高専の魅力といえるでしょう。

カリキュラム

 神山まるごと高専の学科は概要でも説明したようにデザイン・エンジニアリング学科のみです。授業を見ると、一般科目は他の高専とほぼ同様のカリキュラムが組まれています。国語や英語、社会などの文系科目は高校の教科書ベースのものが多く、数学と物理は進みの速い高専向けの教科書など使って授業を行っているようです。専門科目は、電気電子系や情報系の科目を軸として、デザイン系や建築系の科目や神山まるごと高専の強みである起業家育成のための科目が多い印象があります。

 また、どの授業も一貫して起業家精神の育成や自然との触れ合い、アウトプット重視などの神山まるごと高専が目指すビジョンに向けた工夫が織り交ぜられていると感じました。

神山まるごと高専の入試ってどんな感じ?

入試の特徴

マッチング重視

 神山まるごと高専の入試では、学校とのマッチングを重視しています。受験生がアドミッションポリシーに合うかどうか、過去にやってきたことやいま現在できること、未来にやっていきたいことが神山まるごと高専とのマッチするかを、多面的に評価する入学試験になっています。

3つの方式

 2025年度の入試では、前年度と同様に併願可能なA/B/C方式の3つの入試が行われます。アドミッションポリシーに定めた5つの力を一次試験と二次試験で測り、志向性や個性も含めたマッチングを多面的かつ総合的に判断する入試として実施されています。A方式は各評価項目の総合点でマッチ度をはかる方式、B方式は各評価項目から特に秀でている部分を突出点としてマッチ度をはかる方式であり、いずれかの方式の一次試験合格者に対して再度試験を行い、学習力に特化してマッチ度をはかる方式がC方式となっています。マッチ度は調査書、推薦書、課題レポート、学習プロセス、学力試験(国語・数学)、適性検査、ワークショップ、面接から判断しています。

入試スケジュール

 入試はプレエントリー、出願、1次試験、2次試験の順に進んでいきます。プレエントリーは10月初めから行われ、完了すると課題レポートの内容が公開されます。また、1次試験の出題範囲の一部がプレエントリーをした順番に公開されるため、早くプレエントリーをするほど直前対策がしやすくなります。その後、出願が11月初め、1次試験が11月中旬にオンラインで行われます。これに合格すると、A/B方式ともに11月末に行われる対面での2次試験に進みます。最終的な合格発表は12月初旬に行われ、2次試験を受験できたもののこれに不合格だった方はC方式の受験が可能です。C方式の出願は12月中旬、入試と合格発表は1月中旬になっています。

入試倍率

 神山まるごと高専は開校2年目のため、過去の入試データは2年分しかありません。入試倍率はいずれの年度でも非常に高くなっており、神山まるごと高専の独自性が人気であることがよくわかります。2023年度は推薦と一般、2024年度はA/B方式が存在するため、入試方式の併願を含んだ倍率と実質倍率が存在します。

合格者志願者数(併願含む)志願倍率実受験者数実質倍率
2023年度44名399名約9.0倍277名約6.2倍
2024年度43名458名約10.6倍241名約5.6倍

(出典: https://kamiyama.ac.jp/admission/2024/result/)

過去問

過去問の傾向

国語

 2023年度、2024年度に共通して、教科としての「国語」ではなく「国語力を観る」という意味合いの強いテストだと感じました。アドミッションポリシーとのマッチ度を図ることを目的としていて、知識がないと解けない問題は最小限に、十分に時間をかければ解ける問題が多く出題されています。また、神山まるごと高専と親和性の高い分野、例えばITや多様性、起業といった分野に興味のアンテナが立っているとより早く解ける問題だとも感じました。

数学

 数学は60点満点で、平均点が2023年度は49.37点、2024年度は39.00点となっています。2023年度の問題に注目すると、問題ごとのレベルの幅が広いという印象を受けます。基本的には解きやすい問題が多く、きちんと対策していれば解けるものの、簡単な問題から難しい問題まで幅広く出題されています。そうしたなかで、受験生の間で差がつく問題は、各大問にある考察問題だといえるでしょう。これは非常に難しく、知識で解けるような問題ではありません。その場で初めて見た問題に対して、どうアプローチしていくかという姿勢が重要視されている問題だといえるでしょう。数学を基礎からきちんと理解していることが解くうえで必要だと感じました。

過去問を踏まえた対策

 過去問を通して、各教科の対策について触れていきましょう。

 数学は、小手先で解くのではなく、数学を本当の意味で勉強することが必要とされるでしょう。数学が好き、探求心が強い、粘り強く考える力があるといったことが解くうえで求められます。

 国語は、知識ではなく、文章や言葉をツールとして使うロジカルな能力が必要とされるでしょう。また、神山まるごと高専と親和性の高い分野に日ごろから興味を持つことも大事だといえます。

 2つの教科を通していえるのは、短期的な入試対策が難しいということです。もちろん、高校入試や他の高専入試で求められるような数学、国語の対策はある程度必要ですが、それにプラスして受験生自身の普段からの考え方といったような、年単位の長い時間をかけて培っていく力が問われる試験です。

 対策の前に、過去問を自分で見てみて、自分が神山まるごと高専にマッチしているかどうかを今一度深く考えてみることが大切だと感じました。

他の高専の入試との違い

 ここでは、主に国公立の高専と神山まるごと高専の入試制度を比較していきます。

科目数

 国立高専の入試は国語、数学、英語、理科、社会の5科目で、神山まるごと高専の入試の数学、国語の2教科と比べて科目数が多いです。テストの内容も、先の過去問の傾向でお伝えしたように神山まるごと高専は少し変わった内容なので、それぞれ対策は変わってきます。

面接とワークショップの有無

 国立高専の一般入試では筆記試験のみで面接やグループワークはありません。しかし、神山まるごと高専の入試では、A/Bどちらの方式でも2次試験として面接とワークショップが課されます。このことから、神山まるごと高専の入試は推薦入試に近いものだといえるでしょう。

まとめ

 神山まるごと高専は新しくできた学校で、今までの学校とはコンセプトの異なるとても個性的な学校です。ITや起業、デザインに興味を持っていて学ぶ意欲の強い方にはぴったりの学校だと思います。気になった方はぜひ、公式ホームページなどを見て神山まるごと高専をさらに深く知っていただけたらと思います。

よくある質問

私立ですが学費はどれくらいかかりますか?

 神山まるごと高専は経済状況に左右されない学校を目指しています。「家庭の経済状況に左右されず、世界を変える可能性を秘めた子どもたちの誰もが目指せる学校にしたい。」という思いから、様々な企業の支援を得て独自の給付型奨学金が用意されており、公的支援と合わせて学費の実質無償化が行われています。

 入学金は23万円で、世帯年収398万円以下の場合に同額の奨学金を給付、学費は1年で200万円で、希望する全員に学費納入前に同額の奨学金を給付、寮費は1年で100万円で、世帯年収の7.64%以下(上限50万円)の負担となるように奨学金を給付される仕組みがあります。

 これに当てはめると、世帯年収500万円の家庭なら入学金23万円と1年ごとに寮費38万円程度の負担、世帯年収700万円以上でも入学金23万円と1年ごとに寮費万円で済むため、国公立の高専よりも学費は安くなります。

他の高専と併願はできますか?

 神山まるごと高専の入試は、オンラインの1次試験が11月中旬ごろに、対面の2次試験が11月末ごろに行われます。これは、2月ごろに一般入試が行われる国公立高専の入試と日程が重複しないため、どちらも受けることは可能です。しかし、国公立高専の入試前に神山まるごと高専の入学手続きがあるため、神山まるごと高専の合格を滑り止めとして持ったまま国公立高専を受けることは不可能だといえるでしょう。国公立高専と神山まるごと高専を比べたら神山まるごと高専のほうがより行きたいという方には、もし神山まるごと高専に落ちてしまったら国公立高専も受けるという手段もあります。

 神山まるごと高専以外の私立高専との併願は、学校によって日程や受験制度が異なるため、自身で調べていただくことをお勧めします。

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