
はじめに
高専の推薦入試は「評定がほとんど」と言われますが、実は評定が高くても落ちる人はいます。
結論から言うと、「アドミッションポリシー(高専が求める学生像)」に合っていないことを自分からアピールしてしまったり、高専の学び方を理解しないまま受験している場合が危険です。
面接では、成績だけでなく「高専で5年間やっていけるか」「先生や友達と普通にコミュニケーションがとれるか」も見られます。
この記事では、評定が高くても落ちる人の特徴と、そうならないための準備の仕方を高専専門塾の視点から分かりやすく解説していきます。
高専推薦入試とアドミッションポリシーの基本
アドミッションポリシーとは?募集要項の読み方
推薦対策のスタートは「募集要項」と「アドミッションポリシー」を読み込むことです。
アドミッションポリシーとは、その高専が「こういう学生に来てほしい」と示した“求める学生像”のことです。
多くの高専では、募集要項の冒頭や「入学者受け入れ方針」といった項目に載っています。
たとえば「数学が得意な人」「ものづくりが好きな人」「リーダーシップを発揮できる人」など、学校ごとに内容は少しずつ違います。
募集要項には、アドミッションポリシー以外にも、
- 推薦を出せる評定の条件
- 試験科目(面接・小論文・口頭試問など
- 試験時間や集合場所、持ち物
- 学力入試の配点や日程
といった入試情報がすべてまとまっています。
まずは志望高専の募集要項を印刷し、保護者の方と一緒にマーカーを引きながら読むのがおすすめです。
推薦入試の選抜方法と評定の役割
推薦入試では「調査書点(評定)」が土台になり、そのうえで面接などで“ふるい”にかけられます。
多くの国立高専では、推薦入試でまず中学校の成績(評定・欠席日数・活動実績など)を調査書点として見ています。
ここで、学校が定めたボーダーラインを超えていないと、そもそも推薦の出願ができなかったり、合格が厳しくなったりします。
ただし、成績だけで合否を決めているわけではありません。
あえて面接や小論文を入れているのは、「この子は本当に高専で5年間やっていけるのか?」を直接確認するためです。授業スピードについていけるか、専門分野への興味はあるか、人柄はどうかなど。
評定が高くても高専推薦入試で落ちる人の特徴
アドミッションポリシーと矛盾する発言をしてしまう
募集要項に書いてある「求める学生像」と真逆のことを面接で話してしまうと、評定が高くても一気に不利になります。
たとえば、アドミッションポリシーに「数学が得意な人」とはっきり書かれている高専で、「苦手教科は数学です。
見るだけで鳥肌が立ちます」と笑いながら答えてしまうケースです。
これは極端な例に見えますが、実際の面接でも似たようなやり取りがたまに起こります。
高専の先生からすると、「募集要項に書いてある“求める学生像”と違うな」と感じた時点で、合格させる理由が薄くなってしまいます。
逆に、
- 理科や数学の応用問題に挑戦するのが好きです」
- ロボコンで使えるようなプログラミングに興味があります」
といった、高専の教育に合ったエピソードを話せると、アドミッションポリシーにマッチしていることが伝わりやすくなります。
高専の学び方や校風への理解が浅い受験生
高専がどんな学校なのかをよく知らないまま受験すると、「入ってからつらそうだな」と判断されてしまうことがあります。
高専は、普通高校よりも数学・理科の進みが速く、1年生から専門科目や実験がスタートする学校です。
5年間同じキャンパスで学び、途中で研究室に配属されて卒業研究にも取り組みます。
こうした特徴を理解せず、「楽そうだから」「評定が足りたから」という理由だけで志望しているように見えてしまうと、面接官の印象は良くありません。
面接では、「高専に入ったら具体的に何を頑張りたいか」「なぜ高校ではなく高専なのか」といった質問がよく出ます。
ここで、自分なりの言葉で「高専だからこそやりたいこと」が話せるかどうかが分かれ目です。
コミュニケーションが極端に取りにくいケース
アドミッションポリシーに合っていても、「あまりにもコミュニケーションが成り立たない」場合は不合格になることがあります。
面接では、専門的な知識だけでなく、「挨拶ができるか」「質問に対して、最低限の会話が成立するか」といった点も見られます。
高専に入ったあと、授業・実験・グループワーク・課題などで先生や友達と関わる場面はたくさんあります。
そこで全く会話ができないと、本人も周りもつらくなってしまうからです。
もちろん、緊張して言葉が詰まってしまうのは誰にでもあります。
大切なのは、
- 相手の目や顔の方向を見る
- 質問の意図を聞き返しながら、ゆっくりでも自分の言葉で話そうとする
といった「伝えようとする姿勢」があるかどうかです。
普段から先生や家族と話す回数を増やし、簡単な自己紹介や志望理由を声に出して練習しておくと安心です。
面接で好印象を与えるための基本マナーと話し方
面接当日の流れとチェックされやすいポイント
面接では「内容」だけでなく、「入室〜退室の流れ」や「立ち居振る舞い」も含めてトータルで見られます。
一般的な流れとしては、
- 名前を呼ばれる → ノック → 入室
- 「失礼します」とあいさつして入る
- 立った状態で名前と受験番号を伝える
- 「どうぞお座りください」と言われてから着席
- 質問への受け答え
- 最後のあいさつと退室
といった形が多いです。
この一連の動きの中で、
- 声が小さすぎないか
- 態度が乱暴になっていないか
- 指示を落ち着いて聞けているか
などを見ています。
細かい作法にこだわりすぎる必要はありませんが、「相手に失礼のないレベル」で統一されていると安心です。
自分の学校の先生に一度は本番を想定したロールプレイをしてもらい、「気になる癖があれば教えてください」とお願いしておくと良いでしょう。
緊張しやすい人のための事前準備と練習方法
緊張は悪いことではありませんが、「何も話せない状態」を防ぐための準備はしておきましょう。
まずは、よく聞かれる基本質問をノートに書き出します。
- 志望動機
- 中学校生活で頑張ったこと
- 得意教科・苦手教科
- 将来の夢、高専でやってみたいこと
これらについて、自分の言葉で短く話せるようにしておくと、本番で頭が真っ白になったときの助けになります。
また、家族や友達に面接官役をお願いし、何度か通しで練習しておくと、表情や声の大きさも自然と整ってきます。
緊張しても、「すみません、もう一度よろしいでしょうか」と聞き返せるだけで印象は大きく変わります。 一人で抱え込まず、学校や塾の先生を頼りながら、少しずつ場慣れしていきましょう。

「高専に向いている人」かどうかを先生はこう見ている
高専の授業についていくための勉強習慣と姿勢
先生が本当に気にしているのは「この子は5年間の学びについていけるかどうか」です。
高専は5年制で、数学や専門科目の進度が速い学校です。
そのため、入学後に授業についていけず、留年や退学になってしまう生徒が毎年少なからずいます。
先生にとっても、本人にとってもつらい結果です。
面接では、
- 普段の勉強習慣
- 苦手な教科への向き合い方
- 分からないときにどう行動しているか
といった質問を通して、「学びに対する姿勢」が見られます。
完璧な成績でなくても、「分からないことをそのままにしない」「コツコツ続ける」という姿勢が伝われば、高専でも成長していけると判断されやすくなります。
留年・退学を防ぐために学校側が確認していること
高専側は「合格させたのにすぐに辞めてしまう」状況を避けるために、推薦の時点でしっかり見極めようとしています。留年や退学が増えると、学生本人がつらいだけでなく、クラス全体の雰囲気や指導体制にも影響が出ます。
そのため、先生は推薦入試で「この子は本当に高専と相性が良さそうか?」を慎重にチェックしています。
具体的には、
- 高専の特徴を理解しているか
- 苦手を自覚しつつ、努力しようとしているか
- 体調・生活リズムは安定しているか
- 人間関係トラブルが起きにくそうか
といった点を総合的に見ています。
こうした背景を知っておくと、「先生は落としたいから厳しい」のではなく、「入ってから苦しまないように見てくれている」と考えやすくなるはずです。
推薦入試対策と学力入試対策を両立させるコツ
推薦に全賭けしない勉強スケジュールの考え方
推薦入試は「受かったらラッキー」のボーナスチャンスと考え、学力入試の勉強も並行して進めるのが安全です。
評定が高いと「推薦で決めたい!」という気持ちになりがちですが、倍率は毎年1〜2倍前後あり、絶対に受かる試験ではありません。
不合格だったときに学力入試までの勉強が止まっていると、その後がとても苦しくなってしまいます。
おすすめは、
- 平日は学力入試用の5教科を中心に勉強
- 休日や放課後の一部を、面接・小論文の練習にあてる
といった「学力7:推薦3」くらいのバランスです。
家庭と学校でできるサポートのポイント
受験生一人で抱え込ませず、家庭と学校で情報共有しながら進めると安心です。
保護者の方には、
- 募集要項を一緒に読み、「どんな生徒を求めているか」を共有する
- 面接練習の聞き役になってあげる
- 推薦がダメでも学力入試があることを、何度も言葉で伝える
といったサポートをしていただきたいです。
学校の先生には、推薦願いのタイミングだけでなく、早めに「高専を考えています」と相談しておくと、面接練習や進路相談で協力してもらいやすくなります。
一人で不安を抱え込まず、周りの大人とチームを組むようなイメージで受験を進めていきましょう。
無料勉強相談って??
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まとめ:評定より大切な「高専との相性」
ここまで見てきた通り、評定が高いことは推薦入試で大きな武器になります。
しかし、「アドミッションポリシーに反する発言」「高専の特徴への理解不足」「コミュニケーションが極端に取りにくい」といった点があると、オール5でも落ちてしまう可能性は十分にあります。
大切なのは、評定の数字だけでなく、
- 高専の特徴を理解したうえで志望しているか
- 入学後にどんなことを頑張りたいかが語れるか
- 高専で5年間学び続けられそうな生活習慣や姿勢があるか
といった「高専との相性」です。
推薦にチャレンジする人は、「受かったらラッキー、ダメでも学力入試でリベンジ」と考えつつ、日々の勉強と面接の準備をバランスよく進めていきましょう。
高専推薦入試に関するQ&A
Q1. 評定がオール5なら、さすがに落ちませんよね?
A. 合格の可能性は高いですが、「絶対」ではありません。
アドミッションポリシーに反する発言や、極端なコミュニケーションの問題がある場合は、不合格になることもあります。
Q2. アドミッションポリシーはどこで確認できますか?
A. 志望する高専の募集要項や学校ホームページに記載されています。
「入学者受け入れ方針」「求める学生像」などの項目を探してみましょう。
Q3. 面接で緊張して言葉が詰まったらどうしたらいいですか?
A. 一度深呼吸をして、「すみません、もう一度お願いします」と聞き返して大丈夫です。
完璧な受け答えよりも、落ち着いて話そうとする姿勢のほうが大切です。
Q4. 推薦で落ちたら、学力入試の合格はもう難しいですか?
A. そんなことはありません。
推薦はあくまで1つのチャンスであり、学力入試で合格する人もたくさんいます。
むしろ推薦で本番の雰囲気に慣れたことが、学力入試でプラスになるケースも多いです。

ライター情報
仙台高専マテリアル環境コースを卒業。
ニックネーム:nao
研究室では化学を専攻。コガネムシの研究をしていました。
趣味は野球観戦。楽天イーグルスを応援している仙台っ子です。










