
高専の「専攻科」とは?大学進学との違いや学位について解説
高専は通常5年制ですが、そのあとにさらに2年間通うことができる「専攻科」という仕組みがあります。高専の5年間のことは「本課」とよび、そこを卒業すると「準学士」という称号がもらえます。しかし、準学士は日本独自の仕組みであるため、海外にいったときに学歴としての説明がむずかしいという課題がありました。
そこで、専攻科にプラス2年間通うことで、4年制の大学を卒業した人と同じ「学士」という学位を手に入れることができます。学位は世界で共通して認められる資格なので、海外での活躍を目指す人にとっても大きな強みになります。
年齢としては、大学を卒業するのと同じ22歳のタイミングで社会に出ることになります。つまり、高専という慣れ親しんだ環境のままで、大学を卒業した人と同じ扱いになれる場所が専攻科なのです。進学を考えている高専生やその保護者の方は、大学編入だけでなく、この専攻科というルートもぜひ選択肢の1つに入れて考えてみてください。
本課卒業でもらえる「準学士」と専攻科でもらえる「学士」の違い
本課を5年で卒業したときにもらえる「準学士」と、専攻科を卒業したときにもらえる「学士」には、大きな違いがあります。1番の違いは、それが世界で通用する「学位」であるかどうかという点です。準学士はあくまで日本国内における「称号」という扱いになります。これに対して学士は、世界共通で認められている公的な学位です。
もし将来、海外の企業で働いたり、海外の大学院に進学したりすることを考えているなら、学士の学位を持っているほうが圧倒的に有利となります。最近では、本課の卒業生にも学位を出せるようにしようという国の動きもありますが、現状では専攻科に進むことが確実な方法です。
また、国内の就職活動においても、大卒としての待遇を受けられるかどうかの境界線になります。基本的には、専攻科を卒業すれば大卒と同じ初任給やキャリアのスタートラインに立つことができます。自分の将来の目標に合わせて、どちらの資格が必要かをしっかりと見極めることが大切です。
高専生が専攻科へ進学する4つの大きなメリット
高専から専攻科へ進学することには、大学へ編入する場合とくらべて、たくさんの魅力的なメリットがあります。受験生や高専生のみなさん、そして保護者の方にとっても安心できるポイントが豊富にそろっているのです。ここでは、専攻科ならではの強みを4つの視点から詳しくご紹介していきます。
まず挙げられるのは、進学のための試験が比較的かんたんで合格しやすいという点です。さらに、国立大学や私立大学とくらべて、授業料などの費用が圧倒的に安く抑えられるというコストパフォーマンスのよさもあります。
それだけでなく、5年間の本課でやってきた研究をそのまま同じ環境で続けられることや、時間を自由に使いやすいため長期のインターンシップに挑戦しやすいというメリットもあります。大学へ編入すると新しい環境に慣れるだけで精一杯になりがちですが、専攻科なら自分のやりたいことにすぐチャレンジできる自由な環境が手に入ります。
メリット1:大学編入受験よりも試験が比較的かんたんで入りやすい
専攻科へ進学する最大のメリットの1つは、大学への編入試験にくらべて、合格のハードルが比較的低いことです。一般的に、他大学の3年生から途中入学する編入試験は、専門的な問題が多くて対策がとても大変になります。しかし、専攻科の入試は、自分の通っている高専の仕組みに沿っておこなわれるため、対策が立てやすいのです。
多くの高専では、推薦入試と学力試験の2つが用意されています。推薦入試の条件は、学内での成績がだいたい上位半分に入っていることです。この推薦入試を利用すれば、当日は面接の試験だけで合格できるケースがほとんどとなります。
高専生全体の半分くらいは5年で就職を選びます。残りの半分が進学を選択し、そのなかでさらに専攻科と大学編入に分かれます。そのため、学内で真面目に授業を受けて上位半分に入っていれば、ほぼ確実に推薦をもらって進学することができるのです。受験のストレスを最小限に抑えて大卒の資格を目指せるのは、専攻科ならではの魅力といえます。
メリット2:国立・私立大学へ進学するよりも圧倒的に学費が安い
保護者の方にとっても非常に大きなメリットとなるのが、進学にかかる費用を大幅に抑えられるというコストパフォーマンスのよさです。大学へ編入する場合、たとえ国公立の大学であっても入学金や授業料がかかります。もし私立の大学に進学するとなれば、さらに高額な授業料を毎年支払わなければなりません。
これに対して高専の専攻科は、国立大学よりもさらに安い授業料に設定されています。2年間のトータルでかかる学費の差は、私立大学とくらべると数百万円単位になることも珍しくありません。
さらに、自宅から今の高専に通っている人であれば、そのまま実家から通い続けることができます。他県の大学に編入すると、新しくアパートを借りて1人暮らしを始めるための敷金や家賃、毎月の生活費が必要になります。そうした移動や生活にかかる余計なコストをすべてカットできるため、経済的な負担を極限まで減らして大卒と同じ学歴を手に入れることができるのは大きな強みです。
メリット3:慣れ親しんだ環境で本課の研究を継続・発展できる
高専の5年生になると、すべての学生が研究室に所属して「卒業研究」に取り組みます。この本課での研究を、さらに深く突き詰めていきたいと考えたとき、専攻科は最高の環境となります。なぜなら、これまで使ってきた実験設備や、気心の知れた先生のもとで、そのまま研究を継続できるからです。
他の大学に編入した場合、まずは新しい学校の雰囲気に慣れることから始めなければなりません。研究室のルールや、どこにどんな実験道具があるのかを覚えるだけでも、たくさんの時間がかかってしまいます。
しかし専攻科であれば、進学したその日からすぐに本格的な研究活動をスタートさせることが可能です。同じテーマを2年間かけてさらに発展させることもできますし、もし途中でテーマを変えたくなった場合でも、慣れた環境なのでスムーズに進めることができます。このように、無駄な時間を使わずに自分の専門知識や技術をどんどん高めていけるのは、研究が大好きな高専生にとって大きなメリットです。
メリット4:自由な時間が多く長期インターンシップに参加しやすい
専攻科の2年間は、大学の3年生や4年生とくらべて、時間の自由度が高いという特徴があります。大学へ編入した学生の多くは、高専の本課で取った単位がうまく引き継がれず、足りない単位を満たすために毎日たくさんの授業を受けなければなりません。そのため、3年生の時期は非常に忙しくなってしまいます。
一方で専攻科は、先生たちが学生の自主性を重んじる「放任主義」の傾向が強く、授業の数もそれほど多くありません。日々の活動のメインは研究になるため、スケジュールを自分でコントロールしやすくなります。
この自由な時間を利用して、多くの専攻科生が長期のインターンシップ、つまり企業での就業体験に挑戦しています。高専の専攻科では、14日以上の長期インターンシップに参加すると、それがそのまま学校の単位として認められる仕組みがあります。海外の企業へ数ヶ月間留学したり、他大学の研究室へいったり、あるいは自分で起業の準備をしたりと、自分のやりたいことにトコトン時間を投資できるのが最大の魅力です。

知っておきたい!高専専攻科のデメリットや注意点
ここまで専攻科の魅力的なメリットをたくさんお伝えしてきましたが、進路を決めるためにはデメリットや注意点についても、しっかりと知っておく必要があります。良い面ばかりを見て進学を決めると、あとから「こんなはずではなかった」と後悔してしまうかもしれません。
専攻科のデメリットは、メリットの裏返しになっている部分がとても多いです。環境が変わらないということは、居心地がよくて楽である反面、新しい刺激や人間関係の広がりが少ないということでもあります。
また、生活面や学習面において、自分を厳しく律していかなければならないという難しさもあります。大学編入のように強制的に新しい環境へ飛び込むわけではないため、自分で目的意識を持って行動しないと、ただなんとなく2年間が過ぎてしまうリスクがあるのです。さらに、高専特有の生活環境の変化として、それまで暮らしていた学生寮を出なければいけなくなるという具体的なルール上の注意点もあります。
1. 多くの高専で「寮」を出なければいけない可能性がある
専攻科に進学する際の具体的な注意点として、多くの高専において「学生寮を出なければならなくなる」というルールがあります。本課の5年間は寮生活を送っていた学生であっても、専攻科生になると基本的には寮の部屋を退去し、自分でアパートを探して1人暮らしをするか、実家から通う必要が出てくるのです。
これは、高専の寮が基本的には1年生から5年生までの本課生を優先して受け入れるようにつくられているためです。専攻科生の枠が少なかったり、そもそも専攻科生の入寮を認めていなかったりする高専がほとんどとなります。
そのため、これまで寮生活で通学時間をゼロに抑えていた人や、食事の心配をしなくてよかった人は、生活環境が大きく変わることを覚悟しておかなければなりません。自分で自炊や洗濯をおこない、通学のための時間を確保する必要が出てきます。専攻科への進学を決める前に、自分の通う高専の寮の決まりがどうなっているのかを必ず確認し、保護者の方とも生活費の相談をしておくことが大切です。
2. 環境が変わらないため、新しい刺激や人間関係が広がりにくい
環境が変わらないことは専攻科の大きなメリットですが、それは同時に「新しい出会いや刺激が少ない」というデメリットにもなります。他大学へ編入すれば、全国から集まる多様なバックグラウンドを持った新しい友人や、異なる分野の教授たちと出会うことができ、人間関係が一気に広がります。
しかし専攻科の場合、周りにいるのは5年間ずっと一緒に過ごしてきたおなじみの同級生や、すでに知っている先生ばかりです。そのため、キャンパスの雰囲気も本課のころと全く変わりません。
この居心地のよさに甘えてしまうと、自分の視野が狭くなってしまったり、成長のスピードが鈍ってしまったりする危険性があります。専攻科で充実した2年間を過ごすためには、学校の外へ目を向ける意識がとても重要です。さきほどご紹介した長期インターンシップなどを積極的に活用して、意識的に外部のコミュニティや社会と関わりを持ち、自分から新しい刺激を取りにいく姿勢が求められます。
高専専攻科の受験スケジュールと合格のための定期試験対策
専攻科への進学を視野に入れる場合、まずは入試がいつおこなわれるのかという受験のスケジュールを把握することがスタートラインになります。大学編入試験を考えているライバルたちとは動き出すタイミングが少し異なるため、早めの準備が必要です。
一般的な大学編入の試験は、5年生の夏ごろにおこなわれることが多いです。これに対して高専の専攻科入試はスケジュールがとても早く、5月に推薦入試、6月に学力試験が実施されるのが標準的な流れとなっています。
このように入試が早い時期におこなわれるため、まずは専攻科の合格をしっかりと確保したうえで、そのあとに本命の大学編入試験にチャレンジするという併願の戦略を立てる高専生もたくさんいます。もし大学に合格したら専攻科の入学を辞退することができる高専も多いため、精神的なお守りとしても専攻科は心強い存在です。いずれにしても、5年生の春には勝負が決まるため、早めの対策が合格の鍵を握ります。
4年生以下の高専生が今からやるべき定期試験と数学の対策
それでは、専攻科に確実に合格するためには、どのような受験対策をおこなっていけばよいのでしょうか。答えは非常にシンプルで、「日々の定期試験対策を全力でおこなうこと」です。専攻科の推薦入試を勝ち取るためには、学内での成績が上位半分以上に入っていることが最低条件となるからです。
つまり、4年生以下の低学年の皆さんは、毎回の定期テストでしっかりと点数を積み重ねていくことが、そのまま1番の受験対策になります。日頃から真面目に授業を受け、テスト前にコツコツ勉強していれば、5年生になったときに面接だけで負担を最低限にして合格を勝ち取ることができます。
なかでも、とくに力を入れてほしい教科が「数学」です。高専の授業において、数学はすべての専門科目や物理の土台となる最も重要な科目となります。数学の理解が遅れると、高学年になったときに専門科目の授業についていけなくなり、最悪の場合は留年してしまうリスクも高まります。早いうちから数学の基礎を完璧に固めておきましょう。
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まとめ:高専専攻科はコスパよくやりたいことに挑戦できる場所
今回は、高専の進路の1つである「専攻科」について、その基本情報や進学するメリット、注意点をまとめてご紹介してきました。専攻科は、4年制の大学を卒業した人と同じ「学士」の学位を、非常に高いコストパフォーマンスで手に入れられる素晴らしいルートです。
4年生以下の皆さんは、まずは日々の定期試験や数学の勉強をがんばり、成績を上位にキープして選択肢を広げていきましょう!
高専専攻科進学に関するよくある質問(FAQ)
Q1:専攻科を卒業したあとの就職先や進路はどうなりますか?
A1: 専攻科を卒業したあとは、大卒と同じ扱いとして一般企業への就職活動をおこなうことができます。高専生の高い技術力は大卒市場でも非常に人気があり、大手企業からの求人も豊富です。また、さらに学問を追究したい場合は、大学の4年生を卒業した人と同様に、各大学の大学院(修士課程)へ進学して2年間学ぶルートを選ぶことも可能です。
Q2:大学編入の試験と専攻科の試験は両方受けることができますか?
A2: はい、多くの高専で両方の試験を併願することが可能です。専攻科の入試は5月〜6月と非常に早いため、先に専攻科の合格をもらっておき、そのあとに夏におこなわれる大学編入試験を受験するという流れが一般的です。大学への合格が決まったあとに専攻科の辞退を認めている高専が多いため、安心して受験に臨むことができます。
Q3:推薦入試に落ちてしまった場合、もう専攻科にはいけませんか?
A3: いいえ、推薦入試で不合格になってしまったり、成績の条件を満たせなかったりした場合でも、6月ごろにおこなわれる「学力試験」を受験して合格すれば進学することができます。学力試験では数学や英語、専門科目などのペーパーテストが課されるため、過去問などをしっかりと解いて対策をしておくことが大切です。

ライター情報
仙台高専マテリアル環境コースを卒業。
ニックネーム:nao
研究室では化学を専攻。コガネムシの研究をしていました。
趣味は野球観戦。楽天イーグルスを応援している仙台っ子です。。












